☕タイで「カフェ戦争」勃発!スタバ買収で激化する市場、PTTとTCCの巨大財閥が激突

アジアの中でもコーヒー人気が著しく高まっているタイでは、今、カフェ市場を巡る競争が熾烈を極めています。その火付け役となったのは、タイ屈指の大富豪が率いる巨大コングロマリット、タイ・チャローン・コーポレーション(TCC)グループです。2019年5月、TCCグループは、アメリカ発の世界的なコーヒーチェーンスターバックスコーヒー(通称:スタバ)のタイ国内事業(当時372店舗)の運営権を、約540億円という巨額で買収しました。この動きは、カフェ業界で圧倒的な存在感を示す国営タイ石油公社(PTT)に対し、TCCが明確な挑戦状を叩きつけた形として注目を集めています。

TCCによるスタバ事業の獲得により、年間300億バーツ(約1040億円)を超える巨大なタイのコーヒーチェーン市場は、いよいよ一触即発の様相を呈しています。タイのコーヒー消費量は年間およそ15%という驚異的なペースで伸び続けており、競争激化の背景には旺盛な需要の存在があるのです。事実、TCC傘下の消費財大手バーリユッカーは、2018年末にも地元の老舗チェーンであるワーウィーコーヒーを買収するなど、カフェ市場への参入を積極化させていました。

スタバの最大のライバルとして立ちはだかるのは、PTTが手掛ける「カフェ・アマゾン」です。ブランドの知名度ではスタバに一歩譲るものの、国内に2,000店舗以上を展開する堂々の最大手チェーンとなっています。PTTはこのカフェ・アマゾンの店舗数を、5年以内に3,500店まで拡大する計画を掲げており、その攻勢は衰えることを知りません。PTTでガソリン小売事業を担当するスチャット・ラマーク上級副社長は、TCCが強力なライバルとなったことは認めつつも、「これを歓迎し、カフェ・アマゾンの拡大に邁進する」と、強気の姿勢で受けて立つ決意を表明しています。

PTTの大きな強みは、系列のガソリンスタンド**(GS)約1,500カ所にコーヒー店を併設・拡大している点にあります。移動の途中に立ち寄る顧客の利便性を考えれば、これは大きな優位性と言えるでしょう。一方、TCCグループも不動産開発事業を手掛けており、バンコク市内の一等地にあるオフィスビルや商業施設を運営しています。このTCCのネットワークを活用できれば、スタバは従来の高級イメージを保ちつつ、利便性の高い都心部でチェーン拡大を加速させられる可能性があります。

各社が入り乱れるタイのカフェ市場の急拡大を受け、一部のアナリストからは価格戦争が勃発するのではないかとの見方が出ています。タイの有力シンクタンクであるカシコンリサーチセンターのアナリスト、ケバリン・ワングピチャヤスク氏は、「タイのカフェ市場は顧客の奪い合いの様相を呈しており、今後は地元チェーンも含めた攻勢が予想されます」と指摘しています。また、同氏は、スタバが高級なブランドイメージを維持し、対するPTTはガソリンスタンド網を通じた速やかな拡大に注力している、というそれぞれの戦略の違いについても解説しています。

TCCグループは、スタバの運営権をシンガポールに上場している子会社のタイ・ビバレッジから取得しました。この買収には、TCCが長年の課題としている、アルコール飲料への依存度を下げる狙いも見え隠れします。TCC全体の2018年の売上高2300億バーツのうち、アルコール飲料が87%を占めており、コーヒーを含むソフトドリンク事業を強化することで、収益構造の多角化を図りたい考えがあるようです。

ちなみに、1998年にタイへ進出したスタバは、これまで順調に業績を伸ばしてきました。2018年の純利益は11億バーツ(約38億円)に達しており、前年の8億8千万バーツから25%増と、その勢いは明白です。タイ経済がこの10年間好況を保っていたことが、コーヒーを飲む習慣を持つ消費者の増加に繋がっていると言えるでしょう。消費量の主流はインスタントコーヒーですが、より高品質な高級焙煎(ばいせん)コーヒーへの需要も急速に高まっています。

英国の調査会社ユーロモニターインターナショナルによりますと、2018年時点でタイ国内のカフェの店舗数は8,025店に上り、前年比4.6%増と着実に市場が拡大しています。国営石油会社であるPTTがカフェ事業に力を入れる背景には、石油事業の収益減少を補いたいという切実な理由があります。PTTは2016年に非石油・小売事業を分離し、新会社PTTオイル・アンド・リテール・ビジネス(PTTOR)を設立しました。PTTORは、この2019年後半にタイ証券取引所への上場を計画しており、調達した数十億バーツをカフェ・アマゾンなどの事業拡大資金に充てる狙いがあるようです。

私が編集者としてこの動きを見ていると、このタイの「カフェ戦争」は単なるコーヒー市場の競争に留まらない、タイの経済構造の変化と、巨大財閥同士のプライドをかけた覇権争い**だと感じられます。特に、PTTが国営企業としてのインフラの強さを活かし、TCCが豊富な資金力と不動産ネットワークで対抗するという構図は非常に興味深いです。消費者にとっては、競争の激化によって質の高いコーヒーをより身近な場所で、手軽に楽しめるようになることが期待でき、まさに「ウェルカムな競争」ではないでしょうか。今後、スタバの「高級ブランド」戦略と、カフェ・アマゾンの「浸透力」戦略が、どのような結果をもたらすのか、目が離せない状況が続くでしょう。

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