「ベアリングの寿命はあと20年程度だろう」という衝撃的な言葉から始まった日本精工名誉顧問、朝香聖一氏の社会人生活。1965年に入社した当時に投げかけられたその予言は、現代の目覚ましい技術革新によって鮮やかに裏切られることとなりました。
自動車やパソコン、さらには巨大な産業用機械に至るまで、私たちの生活を支えるあらゆる製品には、必ずと言っていいほど「ベアリング(軸受け)」が組み込まれています。これは回転する軸を滑らかに動かすための部品で、摩擦を極限まで減らす役割を担っているのです。
SNSでは「古代メソポタミアから続く技術が今も最先端なのが熱い」「ダ・ヴィンチも注目していたなんてロマンがある」と、その歴史の深さに驚く声が上がっています。朝香氏は、この世に摩擦という物理現象が存在し続ける限り、軸受けの需要が潰えることはないと断言します。
2019年11月19日現在の世界市場において、ベアリングの総需要は約4兆円という膨大な規模に達しています。しかし、現状に甘んじることは許されません。自動車の電動化が進めば、従来の構造では部品の使用数が減少するという厳しい現実にも直面しているからです。
次世代通信規格「5G」の普及やロボット産業の台頭に対応するためには、従来よりもさらに小さく、軽く、そして精密でタフな製品が求められます。これまで培ってきた減速機構などの高度な技術蓄積をいかに新しい価値として提案できるかが、今後の勝負どころでしょう。
模倣を寄せ付けない技術の結晶と「インダストリー4.0」への挑戦
巨大な潜在力を持つ中国市場において、かつては模造品や図面の流出といった苦い経験もありました。しかし、朝香氏は自信を覗かせます。ボールの精度や潤滑油の絶妙な成分配合など、形だけを真似ても決して到達できない「見えないノウハウ」が日本精工にはあるのです。
現在、製造業は大きな転換点を迎えています。「インダストリー4.0(第4次産業革命)」と呼ばれる、製造業とITを融合させて工場の自動化や効率化を極限まで高める動きです。デジタル経済の中で、いかにして自社の製品が貢献できるかを熟考しなければなりません。
私が考えるに、技術の進化は止まりませんが、それを使うのは結局のところ「人」です。朝香氏が指摘するように、どんなにデジタル化が進んでも、現場に足を運び、泥にまみれて宝を探す泥臭い執着心がなければ、真のイノベーションは生まれないのではないでしょうか。
2019年11月19日、朝香氏は若い世代へ向けて、営業や対人コミュニケーションの重要性を説いています。これは、古くからの友を尊ぶ中国でも欧米でも共通するビジネスの本質です。手間と時間を惜しまず、人と人との繋がりを大切にする姿勢こそが成長の鍵となります。
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と人気キャラクターに叱られないよう、常に感度の高いアンテナを張り巡らせる必要があります。100年先も企業が輝き続けるためには、市場の動向を的確に捉え、挑戦し続ける「会社への愛」と「実行力」が不可欠なのです。
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