2019年12月02日、東日本大震災の爪痕を色濃く残す宮城県石巻市の旧門脇小学校にて、校舎の一部を震災遺構として残すための解体工事が始まりました。全長107メートルに及ぶ3階建ての学び舎は、中央の約65メートルを保存し、それ以外の両端部を撤去する計画です。この日、重機が西側の壁を崩し始めると、集まった人々は静かにその光景を見守っていました。
門脇小学校は、押し寄せた津波に加え、その後に発生した火災によって甚大な被害を受けた稀な場所です。津波の高さは1階の天井近くである約1.8メートルに達し、さらに引火した漂流物によって校舎が激しく炎上しました。今回「震災遺構(しんさいいこう)」、つまり災害の悲劇を後世に語り継ぐための公的な保存物として整備されることになります。
SNS上では、この解体開始を受けて「火災の跡が生々しく、震災の恐ろしさが伝わる場所なので残してほしい」「形が変わるのは寂しいが、維持管理を考えれば致し方ないのかもしれない」といった、複雑な胸中を吐露する声が目立っています。多くの人が、この建物が持つ歴史的な重みと、地域の復興との狭間で揺れる感情を抱いているようです。
石巻市は安全性を最優先に考慮し、公開後も校舎の内部へ直接立ち入ることは禁止する方針を固めました。その代わり、新たに建設される見学用の別棟から、火災や津波の痕跡が残る内部をじっくりと観察できる工夫が凝らされます。2021年度中の一般公開を目指し、今後は本格的な補強工事や展示スペースの整備が進められる予定となっています。
実はこの「部分保存」という決断に至るまでには、地域住民との間で長い議論がありました。2016年に実施されたアンケートでは、住民の8割以上が校舎の全体を残すべきだと回答したのです。しかし、市側は維持管理コストや、被災した建物を毎日目にすることによる心理的な負担を訴える声にも配慮し、最終的にこの規模での保存を決定しました。
筆者の個人的な見解としては、震災の脅威を視覚的に伝えるこの校舎は、人類にとってかけがえのない教訓の場になると考えています。一部が解体されるのは惜しい気もしますが、最も被害の激しかった中央部が守られることで、教訓の「核」は失われません。この場所が単なる悲しみの象徴ではなく、命を守る知恵を育む拠点となることを心から願っています。
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