世界経済の行く末に暗い影を落としている「貿易の鈍化」について、国際通貨基金(IMF)は保護主義の台頭が主因であると指摘し、米中間の火種の早期消火を強く求めています。投資家や市場関係者の視線も、2019年12月04日現在、両国がいつ、どのような形で合意に至るのかという一点に注がれていると言っても過言ではありません。しかし、果たして本当に米中対立だけがこの停滞の真犯人なのでしょうか。
実は、世界の貿易額が国内総生産(GDP)の伸びを上回るというかつての黄金パターンは、2012年ごろを境に終わりを迎えています。これは米中摩擦が激化するよりもずっと前の出来事です。SNS上でも「トランプ政権以前から景気の後退は始まっていたのではないか」といった鋭い指摘が散見されますが、データを紐解くとその直感は正しいことが分かります。貿易の伸びがGDPを下回る現状には、もっと構造的な変化が隠されているのです。
米国と中国で起きている「輸入構造」の劇的なパラダイムシフト
第一の要因として、世界最大の輸入大国である米国の変化が挙げられます。米国では長らく経済成長以上に輸入が増える傾向にありましたが、2012年ごろからその比率が低下に転じました。その背景には、自国でエネルギーを賄える「シェール革命」による資源輸入の激減があります。さらに、消費の主役が「モノ」から「コト(サービス)」へ移ったことで、海外から商品を買い付ける必要性が相対的に低下しているのです。
第二の要因は、世界第2位の輸入国である中国の需要減退です。2016年から2017年にかけては政府の景気刺激策によって一時的な回復を見せたものの、その後は再び勢いを失っています。中国の勢い低下は、国際的な商品価格の下落を招きました。ここで言う商品価格とは、原油や鉄鉱石といった原材料の取引価格を指します。これらの価格が下がると、資源を売って外貨を稼いでいる国々の購買力が失われ、結果として世界全体の貿易量が細ってしまうのです。
私は、たとえ米中間で一時的な「部分合意」が成立したとしても、この世界的な貿易鈍化のトレンドを覆すのは極めて困難だと考えます。現在の停滞は政治的な喧嘩の結果ではなく、エネルギー自給や産業構造の変化という、より根深い「時代の変化」に起因しているからです。むしろ市場が縮小していく中で、限られたパイを奪い合うために各国が再び保護主義的な壁を高く積み上げてしまうという、負の連鎖こそが真に警戒すべき事態でしょう。
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