映像の世界で、今まさに歴史的な主役交代が起きようとしています。動画の視聴を支える根幹技術である「コーデック」において、国際機関が定めた正統派の規格を抑え、GAFAをはじめとするIT巨人が支持する新規格「AV1」が事実上の標準、すなわちデファクトスタンダードの座を奪おうとしているのです。
この動きは、2019年12月04日現在の動画配信市場における勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めています。SNS上でも「4K動画がもっと身近になる」「ライセンス料の縛りがなくなるのは画期的だ」と、技術者や動画ファンから大きな期待と驚きの声が上がっており、業界の注目度は最高潮に達しています。
高額なライセンス料の壁!現行規格「H.265」が抱える深刻な苦悩
現在主流と目されていた「H.265/HEVC」という規格は、13年の登場以来、普及が進まないという皮肉な現実に直面しています。その最大の障壁が、複雑怪奇な特許料の仕組みです。コーデックとは動画データを小さく圧縮して送り届ける技術のことですが、この技術の特許を持つ団体が4つも乱立する事態に陥っています。
利用者はこれらすべての団体と煩雑な契約を結び、それぞれに高額な対価を支払わなければなりません。ある半導体メーカーが、対応機器の販売が予想を下回ったと吐露するように、コストと手間の重さが普及にブレーキをかけているのです。こうした「特許のしがらみ」から脱却したい企業の期待を一身に背負っているのがAV1です。
「無料」と「高性能」を両立!IT王者が結集したAV1の圧倒的実力
2018年に公開されたAV1は、非営利団体のAOMが主導する「ロイヤルティーフリー」、つまり特許料が無料の規格です。グーグルやアマゾン、さらにはインテルやサムスン電子といった42社もの巨大企業が名を連ねています。日本からもソシオネクストが唯一参画し、この「ネット発」の勢力に本腰を入れています。
単に無料なだけではありません。AV1はグーグルの「VP9」などの優れた技術を継承しており、圧縮率はH.265より2割以上も向上しています。より少ないデータ量で高精細な映像を流せるこの技術は、ネット配信に最適です。私自身の見解としても、コストと性能の両面でこれほど合理的な選択肢があれば、企業がなだれ込むのは必然の流れだと感じます。
アップルの電撃参画が決定打に!動画配信の未来を占う一手
AV1の勝利を確信させたのは、2018年1月のアップルによるAOMへの電撃加盟でした。自らH.265の特許を持ちながらも、それを無料で提供しなければならないAV1の陣営に加わったことは、業界を震撼させました。これは特許収入を捨ててでも、新規格がもたらす配信エコシステムの利便性を優先した決断と言えるでしょう。
19年11月に開始された「Apple TV+」では慎重な姿勢を見せつつも、いずれAV1へ移行するとの見方が強まっています。iPhoneという最強のデバイスを持つ彼らが正式に採用に踏み切れば、その瞬間に勝負は決するでしょう。オープンな技術が既得権益を打ち破る、エキサイティングな時代の幕開けを私たちは目撃しているのです。
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