創設70周年のNATOに走る亀裂と中国の台頭――「ロンドン宣言」で見えた米欧の深い溝と揺らぐ安全保障

2019年12月04日、イギリス・ロンドンで開催されていた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が幕を閉じました。創設70周年という記念すべき節目に採択された「ロンドン宣言」では、宇宙空間を新たな防衛領域と定義し、中国の急速な台頭に初めて言及するなど、時代の変化に対応する姿勢が鮮明となっています。

特に注目すべきは、NATOが中国の影響力拡大を「同盟が共同で取り組むべき課題」と明記した点でしょう。宇宙空間を陸・海・空・サイバーに続く「第5の作戦領域」と位置づけ、衛星へのサイバー攻撃などに連携して対処する方針を固めたことは、21世紀型の防衛体制への大きな一歩といえます。

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「不公平だ」トランプ大統領の強気な要求と欧州の困惑

しかし、この華やかな結束の裏では、米国と欧州諸国の間に深刻な温度差が生じています。2019年12月03日の会見で、トランプ米大統領は軍事費の負担が少ない国々を「不公平だ」と激しく批判しました。加盟国は2024年までに軍事費を対GDP比で2%以上にする目標を掲げていますが、達成の見通しは立っていません。

トランプ氏は、目標未達の国に対して米国が防衛義務を果たすかについても明言を避け、同盟の根幹である「集団防衛」の信頼を揺さぶっています。SNS上でも「米国第一主義が同盟を壊しているのではないか」といった不安の声や、「欧州も自立すべきだ」という議論が噴出しており、混迷を深めています。

ここで言う「集団防衛」とは、加盟国の一国に対する攻撃を全加盟国への攻撃とみなして反撃する、NATO最大の武器です。この約束が不透明になることは、同盟の存在意義を問う事態と言わざるを得ません。フランスのマクロン大統領が現在の状況を「脳死状態」と痛烈に表現したのも、無理はないでしょう。

中国・ロシアの接近とNATOに課された重い宿題

中距離核戦力(INF)廃棄条約の失効を受け、ロシアへの対応が急務となる中、中国との向き合い方も火種となっています。米国は安全保障上の懸念からファーウェイ(華為技術)の排除を求めていますが、5Gインフラ整備を急ぐ欧州勢との間には、対中戦略において明らかな「ズレ」が生じている状況です。

2019年09月には中国とロシアが大規模な共同軍事演習を実施するなど、権威主義的な両国が結束を強める動きを見せています。中ロが軍事技術での連携を強める中、民主主義陣営の要であるNATOが内紛を続けている現状は、自ら敵に隙を見せているようなものではないでしょうか。

編集者としての私見ですが、今回の首脳会議は「共通の敵」を再定義した一方で、同盟内の「信頼の欠如」を露呈させる結果となりました。70歳を迎えたNATOが、変化する国際秩序の中で再び強力な結束を取り戻せるのか。その道のりは、ロンドンの冬の空のように、今なお厚い雲に覆われているようです。

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