2019年12月04日、日本銀行の黒田東彦総裁は東京都内で講演を行い、現在急速に普及しているキャッシュレス決済の未来について、非常に示唆に富む見解を述べました。決済手段が次々と誕生する現状は利用者にとって選択肢が増える一方で、実は裏側で「サービスの分断」という大きな壁に直面しているのです。
黒田総裁は、各事業者が自社の顧客を囲い込むことに注力しすぎるあまり、銀行やフィンテック企業が過度な消耗戦に陥っている現状を危惧しています。SNS上でも「アプリを使い分けるのが面倒」「結局どこで何が使えるのか分かりにくい」といったユーザーの困惑する声が相次いでおり、まさに現代の「キャッシュレス戦国時代」が生んだ歪みが表面化しているといえるでしょう。
「相互運用性」が切り拓くキャッシュレスの新たな地平
こうした状況を打破する鍵として、総裁は「相互運用性」の重要性を強く訴えました。これは異なる事業者のプラットフォーム同士が繋がり、ひとつのサービスに登録していれば他社のサービス利用者とも自在にやり取りができる仕組みを指します。この連携が実現すれば、利便性は飛躍的に向上するはずです。
過激な還元キャンペーンなどの「ディスカウント合戦」から脱却し、企業が本来提供すべき「新しい付加価値」で競い合う環境こそが健全だとする総裁の意見には、私も強く共感します。目先のポイント付与だけでなく、生活をどれほど豊かにしてくれるかという本質的なサービス競争こそが、決済インフラとしての真の成長を促すのではないでしょうか。
デジタル通貨「リブラ」への牽制と金融システムの安定
また、世界中で議論を呼んでいる米フェイスブックのデジタル通貨「リブラ」についても、黒田総裁は慎重な姿勢を崩していません。既存の国際送金が抱える「高コスト・低速」という課題がリブラ誕生の背景にあると認めつつも、リスク対応が不十分なまま世に出ることには断固として反対の立場を示しています。
総裁は、リブラが各国の公的な金融システムという「公共財」を利用しながら、有事の際には当局に負担を強いる可能性がある点を指摘しました。これは一種の「ただ乗り」であるとの厳しい認識であり、通貨の信頼性が揺らげば世界的な混乱を招きかねません。2019年12月05日現在の視点で見ても、イノベーションと安全性のバランスをどう取るかが、今後の大きな争点となりそうです。
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