東アジアの外交秩序が大きく揺れ動く中、中国の外交トップである王毅外相が、2019年12月04日に韓国の首都ソウルを訪れました。今回の訪問は、実に5年半ぶりという異例の長期ブランクを経て実現したものであり、冷え切っていた中韓関係の雪解けを期待させる一方で、その裏には米国を強く意識した高度な政治的駆け引きが隠されています。
ソウルに到着した王毅外相は、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相との会談に臨みました。表向きは友好ムードを演出しつつも、最大の焦点となったのは米国による地上発射型の中距離ミサイル配備問題です。中国側としては、自国の安全保障を脅かす火種が近隣諸国に置かれることを、何としても阻止したいという強い決意が滲み出ています。
INF条約失効がもたらした新たな軍事的緊張のフェーズ
この動きの背景には、2019年08月02日に正式に失効した「中距離核戦力(INF)廃棄条約」が深く関わっています。これはかつて米国とソ連が結んだ、射程500キロから5500キロのミサイルを全て廃棄するという歴史的な軍縮ルールでした。しかし、この制約が消滅したことで、米国はアジア圏へのミサイル再配備を自由に検討できる状況になったのです。
中国からすれば、韓国に米国の最新鋭ミサイルが設置されることは、喉元に刃を突きつけられるような脅威に他なりません。王毅外相の言葉の端々からは、安易に米国の軍事戦略に同調しないよう韓国側に強く釘を刺す、冷徹なまでの警告が読み取れます。SNS上でも「また経済制裁の再来か」「韓国は米中の板挟みで苦しそうだ」といった懸念の声が広がっています。
筆者の視点としては、中国がこれほどまでに強硬な姿勢を見せるのは、単なる軍事的な懸念だけでなく、東アジアにおける米国の影響力を少しでも削ぎたいという思惑があるからだと考えます。韓国は安全保障を米国に、経済を中国に依存する「政経分離」の難しい舵取りを強いられており、まさに外交のセンスが試される正念場に立たされていると言えるでしょう。
今後、韓国政府が中国の圧力を受け流しつつ、同盟国である米国との信頼関係をどう維持していくのか、その動向から目が離せません。大国同士のパワーゲームに翻弄される周辺諸国の苦悩は、2019年12月05日現在の国際情勢において、最も注視すべきデリケートな課題であることは間違いないはずです。
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