ベアリングという小さな部品で地球を動かし続ける日本精工(NSK)。その成長を牽引してきた朝香聖一名誉顧問は、製造業のトップが持つべき覚悟について、熱い想いを語っています。未曾有の経済危機であったリーマン・ショックの際、朝香氏は自ら社長任期を1年延長するという異例の決断を下しました。
当時の経営環境は、売上高も営業利益も激減するという極めて厳しいものでした。しかし、朝香氏は断固として構造改革を断行します。結果として四半期ベースの赤字を食い止め、次の世代へバトンを繋ぐことができたのです。SNS上では「トップが自ら泥をかぶる姿勢こそが真のリーダーだ」と、その責任感に感銘を受ける声が多く上がっています。
「役員室でふんぞり返るな」現場至上主義の教え
朝香氏の哲学は一貫して現場にあります。本社に届く情報は、すでに誰かの手で選別されたものに過ぎないと氏は指摘します。だからこそ、経営トップは役員室に閉じこもるのではなく、自ら現場へ赴き、耳の痛い「悪い話」にこそ積極的に飛びついていく必要があるのです。
自らの目で真実を確かめ、課題を解決する力を養うことこそ、リーダーの義務といえるでしょう。社内事情ばかりに目を向ける役員に対し、氏は厳しく発破をかけます。コストダウンについても、単なる数字の管理ではなく、製造業が生き残るための「生命線」として具体的に追求する姿勢を求めています。
信頼を築く「5G」と次世代への技術継承
組織のスリム化も重要ですが、朝香氏は協力会社との絆を大切にしています。無理な取引解消は信用を失う行為であり、パートナー企業との信頼獲得があってこそ強固な経営が成り立ちます。また、現場の技術を守るため、2003年にはリーダー育成を目的とした社内大学を設立し、人材教育に心血を注いできました。
ここで重視されるのが、現地・現物・現実・原理・原則という、いわゆる「5G」の精神です。これは通信規格のことではなく、物事の本質を捉えるための5つの基本姿勢を指す専門用語です。甘い報告には「もう一度顧客の声を聞いてこい」と突き放す厳しさも、すべては社員の成長と製品の安全性を高めるための愛の鞭なのです。
2005年に「NSKモノつくりセンター」、2007年には「NSKインスティテュート・オブ・テクノロジー」を設立。さらに財団を通じて大学の研究に10億円規模の支援を行うなど、産学連携にも積極的です。朝香氏は2018年11月3日に旭日重光章を受章しましたが、その功績を「会社の力」と謙虚に捉えつつ、亡き父への誇らしい報告で締めくくっています。
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