経済産業省が所管する日本最大級の官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)が、ついに新たな一歩を踏み出しました。2019年12月10日、元みずほ証券社長の横尾敬介氏を新たなリーダーに迎え、待望の新経営体制が正式に発足したのです。かつての混乱を乗り越え、日本の産業競争力を高めるための「資金の供給源」として、改めてその存在感を示すことになりそうです。
就任当日の記者会見で、横尾社長は「リスクマネーの供給を促す循環を構築することが最大の責務である」と力強く宣言しました。ここでいう「リスクマネー」とは、失敗する可能性はあるものの、成功すれば大きなリターンが見込める事業に投じられる資金を指します。日本ではこの種の資金が不足しがちですが、JICがその呼び水となることで、社会全体に投資の活力を波及させる狙いがあるのでしょう。
SNS上では「ようやく動き出したか」「停滞していた投資環境が好転してほしい」といった期待の声が上がる一方で、「官民の足並みは本当に揃うのか」という慎重な意見も散見されます。かつての対立を知る人々の間では、透明性の高い運営を求める声が根強く残っています。しかし、横尾氏の冷静かつ誠実な語り口は、市場関係者に対して一定の安心感を与えているようにも見受けられます。
過去の対立を乗り越えた「納得感のある」報酬体系へ
2018年9月に発足したJICは、当初から経営陣の報酬や運営方針を巡って経済産業省と激しく対立した経緯がありました。その結果、同年12月には前社長の田中正明氏を含む民間出身の取締役9名が全員辞任するという異例の事態に陥っていたのです。新体制では、この課題に対して明確な答えを提示しました。横尾社長は、自身の報酬について投資の成功報酬である「キャリー」を排除したことを明かしています。
新たな報酬体系は、一般的な給与と賞与で構成される極めて健全な形に整えられました。民間の高度な専門性を活用しつつも、公的資金を扱う組織としての節度を保つ。この絶妙なバランスこそが、再出発における信頼回復の鍵となるはずです。一方で、実際に投資を行う傘下の子ファンドについては、優秀な人材を確保するために市場原理を取り入れた報酬設定を今後検討していくとのことで、その動向からも目が離せません。
ユニコーン創出へ!4つの重点分野と今後の展望
JICが目指すのは、2020年半ばの「1号ファンド」立ち上げです。投資の柱として掲げられたのは、新規事業の創造や「ユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)」の創出、さらには地方に眠る優れた技術の活用や事業再編の促進という4つの領域です。これらはまさに、日本経済が再び成長軌道に乗るために解決しなければならない喫緊の課題ばかりといえます。
個人的には、今回の再始動が単なる資金提供に留まらず、日本企業の古い構造を打ち破る「変革の起爆剤」になることを期待しています。特に、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)のような案件については、旧来の枠組みを維持しつつも、新たな投資には慎重な姿勢を示した点は評価に値します。過去のしがらみに囚われず、未来の成長分野へ大胆に資金を振り向けることこそが、新生JICに課せられた真の使命ではないでしょうか。
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