イギリスの欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット」を巡る混乱が、世界の自動車産業に暗い影を落としています。2019年12月04日、英自動車工業会のマイク・ホーズ会長は、離脱期限の延期によって業界が被った損失が5億ポンド、日本円にして約700億円以上に達することを明らかにしました。
この巨額のコストは、本来であれば次世代の自動運転技術や電気自動車(EV)の開発に充てられるべき貴重な資金でした。しかし、実際には離脱に伴う物流の混乱に備えた在庫の積み増しや、新たな倉庫の確保といった、いわば「守りの投資」に消えてしまったのです。皮肉にも、まだ離脱が完了していない現段階で、これほどの代償を支払っている事実に驚きを隠せません。
サプライチェーンの寸断と投資の停滞
自動車製造の現場では「サプライチェーン」の維持が生命線となります。これは、部品の調達から製造、販売までをつなぐ一連の供給網のことですが、国境をまたぐルールが不透明になれば、この網がズタズタに引き裂かれてしまいます。関税や輸送コストがどう変化するのか見通せない現状では、海外メーカーが英国への巨額投資を躊躇するのは当然の帰結でしょう。
SNS上でも「ホンダや日産の決断は合理的だが悲しい」「イギリスの製造業はどうなってしまうのか」といった不安の声が数多く上がっています。ホンダの工場閉鎖や日産の生産撤退といった衝撃的なニュースは、単なる一企業の戦略変更ではなく、英国が築いてきたイノベーションの基盤が揺らいでいるサインであると私は感じています。
2020年に向けた正念場と復活への道筋
2019年12月12日に控える総選挙の結果次第で、英国の運命は大きく左右されるでしょう。しかし、マイク・ホーズ会長が指摘するように、選挙で離脱の方針が固まったとしても、それは長い交渉の始まりに過ぎません。現行のような関税ゼロの貿易条件を維持できなければ、英国産の車両が国際市場で競争力を失うことは目に見えています。
2020年の新車販売予測は、世界的な市場停滞も相まって、前年比で数パーセントの減少が見込まれています。輸出が8割を超える英国の自動車産業にとって、この逆風は極めて過酷なものです。今こそ政府と業界が手を取り合い、英国が持つ高度な技術力や人材という強みを再び世界にアピールできる環境を整えることが、再生への唯一の鍵となるはずです。
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