アフガニスタンで人道支援に身を捧げ、志半ばで凶弾に倒れたNGO「ペシャワール会」現地代表、中村哲医師の足跡を辿る動きが急速に広がっています。筑摩書房は2019年12月07日までに、中村さんの著書である『アフガニスタンの診療所から』(ちくま文庫)の復刊を決定したと発表しました。
当初、同社は訃報を受けて3000部の増刷を予定していましたが、インターネット上での反響が予想を遥かに上回ったため、急遽5000部へと発行部数を引き上げています。SNSでは「彼の成し遂げたことをもっと知りたい」「今こそ読むべき一冊だ」といった感動と敬意の声が溢れ、予約が殺到する事態となりました。
本作は1993年に単行本として世に送り出され、2005年に文庫化された中村さんの代表作の一つです。長年、アフガニスタンやパキスタンの過酷な地で医療活動に従事してきた氏の、飾らない日常と情熱が綴られています。2019年12月24日ごろの出荷を目指して、現在急ピッチで準備が進められています。
武器ではなく「命の水」を届けた中村医師の歩み
中村さんが代表を務めた「ペシャワール会」とは、医師やボランティアが協力してパキスタンやアフガニスタンで医療・灌漑支援を行う国際的な非政府組織(NGO)のことです。NGOとは、政府の枠組みを超えて社会問題の解決に取り組む民間団体の総称であり、中村さんはその現場の最前線に立ち続けました。
単なる医療行為に留まらず、干ばつに苦しむ人々のために自ら重機を操り、用水路を建設したエピソードはあまりにも有名でしょう。「100の診療所より、1本の用水路を」という信念に基づいた活動は、砂漠を緑に変え、何十万人もの命を救ったのです。本書には、その原点となる想いが克明に記録されています。
私は、一人の人間がこれほどまでに深い慈愛と実行力を持って世界を変えられるという事実に、深い感銘を禁じ得ません。暴力によって尊い命が失われたことは痛恨の極みですが、彼が残した言葉や「誰もが行きたがらない場所へ行く」という精神は、この本を通じて多くの読者の心に永遠に刻まれるはずです。
混迷を極める現代社会において、中村さんの生き様は私たちに「本当の豊かさ」や「平和の意味」を問いかけてきます。冬の足音が聞こえる2019年12月の今、復刊されるこの一冊を手に取ることは、私たちが彼の志を絶やさないための第一歩となるのではないでしょうか。
コメント