私たちのデジタルライフを支えるスマートフォンの心臓部や、医療現場で活躍するMRIの冷却に欠かせない「ヘリウム」の価格が、今まさに異例の急騰を見せています。2019年12月18日現在の貿易統計によれば、2019年1月から10月までの平均輸入価格は1キログラムあたり6856円に到達しました。これは前年の同時期と比較しても1割以上高く、供給の安定していた時期と比べればその差は歴然です。
特に底値だった2017年からの上昇率は2割に迫る勢いで、ハイテク産業の現場からは悲鳴が上がっていることでしょう。SNS上でも「バルーンアート用のガスが手に入らない」「研究用のヘリウムが足りず、実験が止まってしまう」といった不安の声が目立っています。日常のささやかな楽しみから最先端の科学研究に至るまで、この無色無臭のガスが不足することの影響は、想像以上に広範囲へ及んでいるのが現状です。
なぜ供給が追いつかない?主要産地アメリカの事情と急増する世界需要
そもそもヘリウムとは、天然ガスを採掘する際にわずかに採取される貴重な副産物であり、人工的に作り出すことができない有限な資源です。現在、この市場に影を落としているのは、世界最大の供給国であるアメリカでの生産減少に他なりません。老朽化した施設のメンテナンスや貯蔵量の削減といった供給側の要因が重なり、日本への輸入量も制限されがちな状況が続いています。
一方で、需要の勢いはとどまることを知りません。半導体製造プロセスにおける冷却やパージ(不純物の除去)など、ハイテク製品の品質を保つためにヘリウムは必要不可欠な存在です。中国を中心とした世界的な5Gインフラの整備やデータセンターの拡張が、この希少なガスの奪い合いを加速させています。まさに「供給の蛇口が締まる中で、求める器だけが大きくなっている」という危機的な構図が浮き彫りになりました。
編集者としての私見ですが、今回の高騰は単なる一時的な品不足ではなく、資源リスクへの警鐘と捉えるべきでしょう。これまで安価に手に入っていた資源が、国家間のパワーバランスや技術革新によって一変する怖さを物語っています。今後は「ヘリウムを使わない技術(ヘリウムフリー)」の開発や、一度使ったガスを回収して再利用するリサイクル技術の導入が、企業の生き残りをかけた重要な鍵を握るはずです。
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