東レ・日覚社長に聞く2020年の展望!AI時代の「素材開発」と日本の生き残り戦略とは?

2019年12月25日、世界が新たなデジタル時代の幕開けを前にする中、日本の「お家芸」とも言える素材産業が大きな転換点を迎えています。スマートフォンや次世代エコカーの進化を陰で支えてきたのは、他でもない日本の高度な素材技術です。しかし今、その聖域に「デジタル化」という巨大な波が押し寄せているのをご存知でしょうか。

ネット上では「日本が勝てる最後の砦は素材だ」という期待の声がある一方で、「IT大国の中国や欧米にデータで負けるのではないか」という不安も渦巻いています。そんな激動の最中、東レの日覚昭広社長が語った2020年以降の戦略は、驚くほど地に足の着いた、そして力強いものでした。

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AIを凌駕する?「一万回の試作」が持つ真の価値

現在、素材開発の世界で注目されているのが「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」という手法です。これは、人工知能(AI)を用いて膨大なデータを解析し、新しい材料を効率的に発見する技術を指します。計算機が最適な組み合わせを導き出すこの手法は、確かに開発期間を劇的に短縮する可能性を秘めているでしょう。

しかし、日覚社長は「AIが機能するためには、正確な研究データの蓄積こそが不可欠だ」と断言します。例えば、ユニクロの冬の定番「ヒートテック」の開発には、なんと1万回を超える試作が繰り返されました。ナノレベル(10億分の1メートルという極微細な世界)での改良は、時に理論を超えた驚くべき変化を見せるからです。

泥臭い実験を積み重ねて得られた「生きたデータ」こそが、AIに命を吹き込む鍵となります。国家を挙げてデジタル化を推進する中国の猛追は脅威ですが、半世紀にわたり炭素繊維などの技術を磨き続けてきた日本企業の優位性は、そう簡単に揺らぐものではないと私は確信しています。

「株主第一主義」からの脱却と未来への投資

日本の強さは、短期的な利益に捉われない「息の長い研究」にあります。東レでは、年間約700億円にのぼる研究開発費の約3割を、10年以上先の実用化を見据えたプロジェクトに投じているのです。これは、目先の配当を重視する欧米流の資本主義では、なかなか実現しにくい決断と言えるかもしれません。

近年、米国でも「株主第一主義」を見直す動きが出始めていますが、環境問題やエネルギー不足を解決する新素材は、まさに人類共通の財産です。じっくりと腰を据えて研究に没頭できる企業文化を守ることこそが、結果として長期的な企業価値を高めることにつながるのではないでしょうか。

これからはGAFAのような巨大IT企業が、自動運転やロボット分野で主導権を握る時代がやってきます。そこで日本企業が単なる「下請け」に甘んじるのか、それとも欠かせない「対等なパートナー」になれるかが勝負の分かれ目です。独自の技術力とマーケティング力を武器に、世界を驚かせる新素材が日本から生まれることを期待せずにはいられません。

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