世界中の半導体製造を根底から支えるオランダの巨人、ASMLが驚異的な安定感を誇っています。2019年12月27日現在の市況を鑑みると、スマートフォンの需要変動や貿易摩擦の影響で業界全体が揺れる中、同社は盤石な高収益体質を維持しているのです。
特筆すべきは、2019年7月から9月期の連結決算において、純利益が前期比で3割も増加した点でしょう。米国のラムリサーチやアプライドマテリアルズ、日本の東京エレクトロンといった競合他社が減益に苦しむ局面でも、ASMLは独り勝ちに近い状態を保っています。
この強さの源泉は、単に高価な装置を売るだけでなく、納入後の徹底したサポート体制にあります。SNS上でも「ASMLの保守能力は他社が追随できないレベルだ」といった驚きの声が上がっており、そのビジネスモデルは投資家からも熱い視線を浴びているのです。
10年前の装置を最新鋭へ変貌させる「魔法」のサービス
ASMLが提供する「サービス力」とは、故障時の保守点検だけに留まりません。彼らは、顧客が10年前に導入した古い装置であっても、部品の交換や改造を施すことで最新型と同等の機能を持たせるという、驚くべきアップグレード技術を提供しています。
例えば、ウエハーと呼ばれる半導体の基板に回路を転写するのと同時に計測を行う仕組みを構築するなど、生産性を劇的に高める工夫が随所に凝らされています。これにより、顧客である半導体メーカーは、莫大な新設備投資を抑えつつ最新技術を導入できるのです。
ASML日本法人の藤原祥二郎社長は、顧客の生産コストを下げる努力こそが市場の持続的な成長に不可欠だと説いています。私自身の視点からも、売り切り型ではなく顧客の成功に並走するこの「サブスクリプション的」な発想こそが、現代の製造業が目指すべき理想像だと感じます。
日本メーカーとの命運を分けた「モジュール化」戦略
かつて1990年代には、ニコンやキヤノンといった日本勢が露光装置のシェアでASMLを圧倒していました。当時の日本メーカーは顧客の細かな要望に合わせて一から作り込む「擦り合わせ」を得意としていましたが、これが結果として維持コストの増大を招く要因となります。
対するASMLは、調達した部品を機能ごとにひと塊にする「モジュール化」という手法を採用しました。これにより、導入コストを低く抑えつつ、その後のメンテナンスや部品交換を効率化し、高い利益率を確保することに成功したのです。
現在、同社の売上高に占めるサービス事業の割合は25%に達し、その利益率は3割を超えています。需要の変動が激しい「シリコンサイクル」に翻弄されないASMLの姿は、日本の製造装置メーカーが再び世界で輝くための大きなヒントを示しているのではないでしょうか。
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