2019年12月15日、かつて「インフレファイター」として世界経済を揺るぎない信念で導いたポール・ボルカー氏がこの世を去りました。1985年のプラザ合意当時、竹下登蔵相(当時)が「中央銀行はあまのじゃくだ」と評したエピソードは有名ですが、それは裏を返せば、政治の思惑に決して屈しない強い独立性の象徴でもあったのです。
ボルカー氏の訃報に接し、改めて浮き彫りになるのは、現代の中央銀行が直面している政治介入の深刻さでしょう。SNS上でも「ボルカー氏のような信念を持つリーダーが今こそ必要だ」という声が多く聞かれます。現在はトランプ米大統領によるパウエルFRB議長への露骨な圧力が強まっており、かつての「誘導」を遥かに超えた異様な状況が続いています。
ここで言う中央銀行とは、国の通貨の価値を守るために、金利の調整や通貨量のコントロールを行う特別な機関を指します。一方、パウエル氏が一時停止を決断した「利下げ」とは、景気を刺激するために金利を下げる政策のことですが、これが過度になると企業が借金に依存しすぎるなど、経済の健全性を損なうリスクも孕んでいるのです。
アベノミクスと日銀に漂う「ぬるま湯経済」の停滞感
日本に目を向ければ、状況はさらに深刻かもしれません。日銀は現在、アベノミクスの主柱として「財政ファイナンス」に近い役割を担わされています。これは、政府の借金を中央銀行が直接支えるような状態を指し、本来あってはならない不健全な関係です。SNSでは「将来の増税やインフレが怖い」といった不安の声が日々拡散されています。
さらに、現在の日銀が推進する「マイナス金利」は、もはや副作用の域を超えて地方銀行の経営を圧迫するなどの弊害を生んでいます。当局は追加緩和を「深掘り」とポジティブな表現で言い換えていますが、これは実態を隠す言葉遊びに過ぎないのではないでしょうか。財政再建を先送りし続ける政府に対し、日銀が警鐘を鳴らさないのは極めて不自然です。
私が考えるに、今の日銀に最も欠けているのは、時の政権に「NO」を突きつける勇気です。先進国で最悪の財政状況を抱える日本が、このまま超緩和という「ぬるま湯」に浸かり続ければ、いつか財政と金融が共倒れする連鎖危機を招くでしょう。一時の景気浮揚のために、次世代にツケを回すような政策は直ちに是正されなければなりません。
黒田東彦総裁には、これまでの「政府の優等生」としての顔を捨て、ボルカー氏のような「あまのじゃく」としての意地を見せていただきたいものです。中央銀行の使命は、特定の政権を支えることではなく、国家の100年先の経済を守ることにあります。2019年12月28日、私たちはこの教訓を胸に刻み、経済の歪みに目を向けるべきでしょう。
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