日本の中心地、霞が関で今、異変が起きています。かつてはエリートの代名詞だったキャリア官僚ですが、2019年12月30日現在の状況を見ると、若手職員の離職が深刻な課題となっています。特に経済産業省では、2018年度にキャリア採用の約4割に相当する20人以上が退職するという、過去に類を見ない事態に陥りました。この背景には、単なる忙しさだけではない、現代の若者が抱く切実なキャリアへの不安が隠されているようです。
なぜ、志を持って入省した若者たちが去っていくのでしょうか。明治大学の田中秀明教授は、過酷な長時間労働によって心身が疲弊し、将来の武器となる「専門性」が身につきにくい構造を指摘しています。特定の分野に特化した高度な知識やスキルである専門性が磨けない環境では、優秀な人材ほど自分の市場価値に危機感を覚え、組織を見切ってしまうのでしょう。SNS上でも「これでは国を動かす前に自分が壊れる」といった共感の声が目立ちます。
形骸化した人事評価が奪う若手のモチベーション
さらに深刻なのが、一人ひとりの努力を正当に評価する仕組みの欠如です。厚生労働省の久米隼人氏は、多忙を極める現場では人事面談すら満足に行われていない実態を明かしています。5段階評価の制度がありながら、実態は全員が一律で真ん中の評価を下されるなど、個人の能力や希望が無視されるケースも少なくありません。外務省では、一人の上司が30人近い部下を評価することもあり、若手からは「自分の経歴を把握されていると思えない」と嘆きの声が漏れています。
こうした状況は、組織への帰属意識を著しく低下させます。本来、人事評価とは対話を通じて成長を促す場であるべきですが、それが「こなすべき事務作業」に成り下がっているのは、官僚組織の大きな損失と言えるでしょう。私自身の考えとしても、若手に「自分はこの組織で大切にされている」という実感を与えられない環境で、国を背負う創造的な仕事ができるとは到底思えません。評価の透明性と納得感こそが、今の霞が関に最も必要なピースではないでしょうか。
「回転ドア」がもたらす官民連携の新たな可能性
一方で、停滞する組織に新風を吹き込む動きも出始めています。2019年には、一度退職して民間を経験した元官僚を管理職として再び迎え入れる「中途採用の公募」が経済産業省で始まりました。また、現職のままメルカリなどの民間企業で数ヶ月間働く研修も実施されています。民間ならではのスピード感や、上司と部下が定期的かつ短い頻度で行う「1on1(ワンオンワン)」といった面談手法を学び、役所に戻って新たな価値を創造する職員も現れています。
一度組織を出て再び戻る「回転ドア」のような柔軟なキャリアパスは、官民の壁を取り払い、行政に活力を与える特効薬になるかもしれません。SNSでも「外の世界を知る人が政策を作るべきだ」という肯定的な意見が広がっています。これまでの「一生一つの省庁」という常識を捨て、多様な経験を評価する柔軟な制度設計こそが、優秀な若手を惹きつける鍵となるはずです。日本の未来を担う彼らが、誇りを持って働ける環境へのアップデートが急務となっています。
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