がん患者の3人に1人が離職する現実を変える!桜井なおみ氏が挑んだ「治療と仕事の両立」への大きな一歩

「がんと診断されたら、もう仕事は続けられないのではないか」という不安は、多くの患者さんを苦しめてきました。キャンサー・ソリューションズの代表を務める桜井なおみさんは、2007年より東京大学の医療政策人材養成講座での学びを通じ、この「がんと就労」という難題に真っ向から取り組んでいます。当初、医療現場からは「それは労働問題であり、医療の範疇ではない」といった厳しい声が上がっていたようです。

転機となったのは、ある内部機能障害を持つ女性との出会いでした。彼女は「働く意欲も能力もあるのに、体調の急変で離職を余儀なくされる。柔軟な働き方さえあれば、社会の中で生きる実感が持てるはず」と、桜井さんに切実な思いを託したのです。希少疾患の患者さんの声は国に届きにくい現実がありますが、人数の多いがん患者が旗振り役となれば、社会全体の仕組みを変えられるかもしれません。

彼女の勇気ある後押しを受け、2008年3月24日にようやく研究班が発足しました。調査の結果、驚くべきことに患者の3人から4人に1人が、働きたい意思があるにもかかわらず診断後に離職している実態が浮き彫りになったのです。この「3人に1人が離職」という具体的な数字が新聞で大きく報じられると、それまで批判的だった周囲の目線は、まるでオセロの駒が裏返るように応援へと変わっていきました。

スポンサーリンク

「個人の悩み」から「社会の課題」へ!CSRプロジェクトの始動

これまで「病気での離職」は仕方のない個人的な問題と片付けられがちでしたが、この調査を機に、社会全体で解決すべき構造的な課題として認識され始めました。桜井さんは、がんサバイバーの就労を支援する「CSR(Cancer Survivors Recruiting)プロジェクト」を始動させます。これは、病を経験した人々が再び社会で活躍するための、架け橋となる取り組みです。

シンポジウムの開催や電話相談、さらには働き続けるための工夫をまとめた書籍の出版やインターネットラジオなど、多角的な情報発信が続けられています。SNS上でも「自分だけが孤独ではなかった」「社会とつながっていたいという願いはわがままではないんだ」といった共感の声が溢れました。一人ひとりの声に耳を傾ける桜井さんの姿勢は、多くの当事者に勇気を与え続けているのでしょう。

しかし、当時の国の施策にはまだ大きな壁がありました。第2期がん対策推進基本計画の議論が進む中、当初の議題には「就労」という二文字すら存在しなかったのです。桜井さんは諦めずに要望書を提出し続け、ついに2011年11月14日、厚生労働省のがん対策推進協議会に参考人として招致されることになりました。

与えられたわずか8分という短い時間に、桜井さんは5年分の重みと患者たちの願いを凝縮して訴えかけました。協議会に参加していた他のがん体験者たちも、自らの辛い経験を語ることで彼女を力強くサポートしたのです。その熱意が実を結び、2012年6月08日に閣議決定された計画には、ついに「がん患者の就労を含めた社会的な問題」が重点項目として明記されました。

私は、この一連の歩みは単なる福祉の充実ではなく、日本人の働き方そのものをアップデートする尊い闘いだと確信しています。病気になっても役割を持ち続けられる社会は、誰にとっても優しい場所であるはずです。桜井さんが切り拓いたこの道が、さらに多くの企業の意識を変え、誰もが安心して働ける未来へと繋がっていくことを願ってやみません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました