近年、予防医療への関心が高まる中、2019年6月現在、ある一つのサービスが特に注目を集めています。それは、採血検査をより気軽に、そして迅速に受けられるようにした「銀座血液検査ラボ」(東京・中央)です。この革新的なサービスの背景には、臨床検査技師等に関する法律の改正があります。この法改正により、民間企業でも「自己採血」であれば検体検査、すなわち病気の診断や治療方針を決めるために必要な検査を、医師の指示なしで実施することが可能になったのです。この規制緩和は、生活習慣病や、さらに深刻な病気を未然に防ぐための大きな一歩となると期待されています。
しかし、この採血検査ビジネスに参入している企業はごく限られています。医療法人の場合、もともと血液検査はビジネスとして成り立っているため、改めてこの分野に特化する必要がありません。一方、一般企業は採血技術や検査そのものに関する専門的なノウハウが不足しているため、なかなか手を出しにくいのが現状です。まさに、この専門性と既存プレイヤーの参入障壁が高いところに、真のスキマ市場、すなわち他の企業が容易に攻め込めない未開拓の市場が潜んでいるといえます。
「銀座血液検査ラボ」では、利用者が店舗を訪れると、まずはスタッフから非常に丁寧な説明を受けることができます。その後、使い捨ての検査キットが手渡され、利用者は指先に小さな針を刺して、専用器具で採血を行うという流れです。この一連の作業はわずか10分もかからないうちに終了します。検査結果は最短2日でスマートフォンの専用アプリに送られてくるため、後日、病院へ検査結果を受け取りに行く手間が一切不要です。検査データはスマホでいつでも持ち歩くことができ、もし検査結果に問題が見つかった場合は、そのデータを最寄りの病院へ持参してスムーズに診察を受けることもできるという、極めて利用者目線に立った利便性の高い設計が特長です。
このサービスを運営するメディカルフューチャーのクリエイティブディレクター、小林嵩幸さんは、「長年、医療ビジネスに携わってきた経営者だからこそ、このサービスが実現できたと思っています」と語っています。小林さんはまた、「『身体を管理している人って格好いい』と若い人たちに思ってもらえるようにしていきたいですね」と、このビジネスに込めた想いを明かしています。実際に、同サービスの利用者は30代から40代前半の層が急増しており、これまでの医療検査とは異なる、新しい客層が生まれつつあることが示されています。SNS上でも、「仕事帰りにサクッとできるのが本当にありがたい」「健康診断の結果を待つストレスがない」「自分の体を自分で管理してる感覚が良い」といった、多忙な若年層のライフスタイルに寄り添う利便性への反響が多く見受けられるようです。
新規事業を立ち上げる際、「スキマを狙え」というのはビジネスの定石ですが、他社でも簡単に模倣できるようなスキマはすぐに競争が激化し、ビジネスとして立ち行かなくなってしまうでしょう。しかし、今回取り上げた「銀座血液検査ラボ」の事例は、専門知識や高度なノウハウがなければ簡単に攻略できず、しかも既存の専門企業はあえて手を出そうとしない、という独自の難易度を伴う市場を開拓しています。私は、これこそが本当の意味でのブルーオーシャン、すなわち競争相手のいない未開拓市場だと断言できます。単に「ニッチな分野」であることがスキマなのではなく、その市場への参入難易度と、競合他社が攻め込まないという条件こそが、持続可能なビジネスを生み出す真のスキマであると言えるでしょう。
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