ネット通販に勝つリアル店舗の秘密!北京で大熱狂を巻き起こす日本人建築家の高級自転車店「アールイー」の革新的なサードプレイス戦略とは?

中国といえば、かつては「自転車大国」として知られ、近年ではシェアサイクルの爆発的な普及が話題となりました。そんな中国の首都・北京市で、いま日本人が経営する高級自転車店「アールイー(而意)」が異例の快進撃を続けています。2017年6月24日に1号店を開業して以来、わずか2年余りで現地の有力商業施設から出店のラブコールが殺到する存在になりました。SNS上でも「これまでにない体験ができる空間」「おしゃれで居心地が良すぎる」と、高感度な若者を中心に瞬く間に口コミが拡散しています。

旗艦店があるのは、高級ホテルや外資系企業が集まる北京中心部の大型複合施設「ケリーセンター」です。約600平方メートルの広々とした店内には木材がふんだんに使われ、洗練された落ち着きのある空間が広がっています。壁やロフトに並ぶのは、色鮮やかなスポーツタイプのロードバイクです。なかでも一番人気は、耐久性の高いチタンフレームを採用した独自設計の「アールイーバイク」で、価格は1万〜2万元(約16万〜32万円)に達します。これは現地の大卒初任給1カ月分に相当する高級品ですが、本物志向の顧客が次々と購入しています。

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ネット通販には真似できない!五感を満たす「サードプレイス」の魅力

ネット通販がリアルな店舗を圧倒している中国市場において、なぜこれほどアールイーが支持されるのでしょうか。その理由は、ECサイトでは絶対に手に入らない「体験型の空間」にあります。最大の強みは、ハンドルやサドルなどのパーツを1000通り以上から組み合わせられるカスタマイズ性です。既製品が溢れるネット社会だからこそ、他人とは違う個性を表現したいという中国の消費者の心を完璧に捉えました。

さらに店内には、こだわりのコーヒーやケーキを楽しめるカフェ、風を感じられるメッシュ素材のウェアを扱う雑貨店、さらには生花店まで併設されています。単なる自転車の販売店ではなく、自宅でも職場でもない居心地の良い第3の場所、すなわち「サードプレイス」を提供している点が革新的です。週末にはサイクリングイベントも開催され、自転車を通じた温かいコミュニティが自然と生まれています。この魅力的な空間作りには、日本の大手小売関係者も視察に訪れるほど注目が集まっています。

「ハコモノ」から「生き方」の提案へ。建築家・菅根氏の情熱と信念

このユニークな店舗を率いるのは、建築家であり運営会社「RE」のCEOを務める44歳の菅根史郎氏です。2000年代に都市デザインの専門家として中国へ渡り、数々の大型開発を手掛けてきた菅根氏ですが、多忙による暴飲暴食で体重が100キログラム近くまで増加してしまいました。体調不良に危機感を覚え、義弟の勧めで自転車に乗り始めたところ、なんと30キログラム近い減量に成功します。体力がつき、心身ともに生まれ変わるような原体験をしたことが、ビジネスの原点となりました。

2012年11月24日に長男が誕生したことも、大きな転機となったそうです。「ただ建物を造るだけでなく、次の世代に大切な生活の価値を伝えたい」という強い想いから、手入れをすれば一生モノになる自転車ビジネスへ行き着きました。菅根氏が提案しているのは、自転車そのものではなく、それによって豊かになるライフスタイルそのものなのです。こうしたブレない信念があるからこそ、人々の心を動かす店が生まれたのでしょう。

健康ブームと「見栄」を味方に。SNSが加速させる新しい消費スタイル

現在の中国では、1980年代生まれの「80後(バーリンホウ)」と呼ばれる世代を中心に、空前の未病・健康ブームが巻き起こっています。豊かさの象徴として太ることを気にしなかった親世代とは異なり、若い世代は自己管理や健康的な美しさを重視しています。各地でスポーツジムやマラソン大会が急増するなかで、ロードバイクは「お金をかけた分だけ見た目の格好良さに反映される」ため、自己表現やステータスをアピールしたい層に絶好のスポーツとして受け入れられました。

10億人以上が利用する巨大SNS「微信(ウィーチャット)」の存在も、このトレンドを後押ししています。微信の歩数計機能で友人と競い合ったり、健康的なライフスタイルを投稿して「いいね」を送り合ったりすることが日常茶飯事となっています。収入などの生々しい情報よりも、健康や趣味の投稿の方が周囲の共感を得やすいため、アールイーでの体験はSNSに投稿する格好の素材となっているのです。

編集部の視点として、アールイーの成功は日本の小売業にとっても非常に示唆に富んでいると感じます。モノが溢れ、ネットで何でも買える時代だからこそ、私たちは「人と人が繋がる場所」や「五感で楽しむ体験」に価値を見出します。菅根氏のように、自らの原体験に基づいた強いメッセージを発信し、顧客のコミュニティを育てる手法は、これからのリアル店舗が生き残るためのバイブルになるはずです。2020年の早い時期には黒字化を見込んでいるとのことで、アールイーが中国の都市生活をどう変えていくのか、今後の展開から目が離せません。

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