海運業界の大手である商船三井の池田潤一郎社長が、新年のインタビューで今後の経営戦略を熱く語りました。二酸化炭素の排出量が少ないエネルギーとして注目される液化天然ガス(LNG)事業を中心に、同社は攻めの投資を継続する方針です。SNS上でも「これからの時代を見据えた骨太な投資姿勢だ」「環境対策への本気度が伝わってくる」と、その先見性に大きな期待が寄せられています。
池田社長は、2021年3月期も前の期と同様に約900億円規模の投資を維持すると明言しました。市場の競争は激化していますが、単に荷物を運ぶだけではなく、付加価値の高い周辺事業へ資金を重点的に投入する構えです。これまでは長期契約が主体だったLNG輸送ですが、今後は短期的なスポット市場が広がると予測されています。ビジネスチャンスの拡大を見据え、同社は確固たる地位を築こうとしています。
洋上設備へのシフトと驚きの利益目標
具体的な投資先として注目されているのが、輸送船以外の海洋設備です。同社は、海の上でLNGを再び気体に戻す「FSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)」や、一時的に貯蔵しておく「FSU(浮体式LNG貯蔵設備)」の展開に注力しています。これらは陸上に巨大なプラントを建設するよりもコストや期間を抑えられる画期的な設備です。2023年までにロシアのヤマル半島から産出されるLNGを効率的に運ぶ中継拠点の計画も進行しています。
こうした輸送に留まらない海洋設備事業において、池田社長は5年以内に営業利益を100億円まで倍増させるという野心的な目標を掲げました。現在は50億から60億円ほどの利益を上げているセクターですが、海外企業のM&A(合併・買収)も視野に入れながら急成長を目指すシナリオです。選択肢が多すぎてどれに投資すべきか悩むほど、現場には数多くのチャンスが転がっているといえます。
環境規制への危機感と次世代フェリーの誕生
さらに注目を集めるのが、船の燃料自体のクリーン化です。商船三井は2023年前半までに、日本初となるLNG燃料を使用したフェリーを2隻就航させる計画を決定しました。従来の重油に比べて環境負荷が低いLNGは、次世代の主役に躍り出ています。将来的には、他社と統合したコンテナ船事業への導入や、大量の燃料を一度に補給できる専用船の活用も現実味を帯びてくるでしょう。
しかし、地球温暖化ガスの削減要求は非常に厳しく、2050年までに排出量を半減させるという国際目標を達成するには、LNGの活用だけでは足りません。池田社長は、あえて船のスピードを落として燃費を向上させることや、風力を推進力として利用する最先端技術の導入も検討すべきだと指摘します。こうした環境対応を怠る企業は、荷主から選ばれず市場から淘汰されてしまうという強い危機感がそこにはあります。
揺れる国際ルールと日本の課題
ここで見逃せないのが、欧州を発端とする劇的なルールの変化です。2019年11月に欧州投資銀行が化石燃料事業への融資停止を決めたことで、比較的クリーンとされてきたLNGも逆風にさらされています。EUが目指す「環境負荷の実質ゼロ」の未来において、LNGの立ち位置は決して楽観できません。世界的な需要は当面安泰だとしても、欧米が作った厳格な規制にアジアが従わされる過去の構図が再び繰り返される懸念が浮上しています。
私は、この規制の波を逆手に取れるかどうかが日本の海運業の命運を分けると確信しています。ただ批判するのではなく、商船三井のように新技術や他社との連携へ柔軟に舵を切る姿勢こそが突破口になるはずです。リスクの高いカジュアルクルーズ客船事業でも共同運航のパートナーを募るなど、そのオープンな姿勢は今後の荒波を乗り越える強力な武器になるに違いありません。
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