大手化学・医薬メーカーの帝人が、日本の医療の未来を大きく変える一歩を踏み出しました。同社は在宅医療の分野において、革新的な技術を持つ国内のスタートアップ企業3社とタッグを組み、新事業の開拓に乗り出すことを2020年1月14日に発表したのです。少子高齢化が進む日本において、自宅での治療や療養の重要性は日増しに高まっていますが、医療費を抑えようとする国の動きもあり、従来のビジネスモデルだけでは今後の市場拡大に限界があると予測されています。
そこで帝人の子会社である帝人ファーマは、外部の斬新なアイデアを取り入れる「オープンイノベーション」に活路を見出しました。2019年7月から事業開発支援を手掛ける企業と共同で、新たなビジネスを生み出すためのプログラムを展開してきたのです。40社を超える応募の中から、厳正な審査を経て選ばれたのが、AMI、エーテンラボ、キママニという気鋭の3社でした。SNS上でも「大企業とベンチャーの理想的なコラボ」「医療のデジタル化が一気に加速しそう」と、大きな期待が寄せられています。
最先端の「ヘルステック」がもたらす新しい医療の形
今回選ばれた3社が取り組むのは、ITやデジタル技術を医療に融合させる「ヘルステック」と呼ばれる最先端の領域です。例えばAMI社は、心臓の病気をより正確に、かつ簡単に見つけられるような、診断支援機能が付いた最先端の聴診器の開発を進めています。これまで医師の経験や感覚に頼る部分が大きかった診断において、デジタルによる新しい指標が加わることで、治療法が劇的に改善される可能性を秘めているでしょう。
また、エーテンラボ社は、同じ目的を持つユーザー同士がスマートフォンアプリ上で励まし合い、健康的な生活習慣を定着させるサービスを提供しています。これを在宅医療に応用し、孤独になりがちな患者さんが治療を前向きに継続できるようサポートする狙いです。さらにキママニ社は、日々の感情の揺れ動きを記録するアプリを手掛けており、将来的にはうつ病などの精神疾患を専門的に治療するための「医療用アプリ」へと進化させる計画を進めています。
巨額の投資と強固なサポートで2021年の事業化へ
帝人ファーマは、選ばれたベンチャー企業に対して1社あたり数千万円という手厚い資金援助を行うだけでなく、自社が持つ強力なリソースも惜しみなく提供します。医療機器や医薬品を世に出すために不可欠な「臨床試験(治験)」のノウハウをはじめ、複雑な「薬事承認申請」の進め方、さらには全国の医療機関との太いパイプまで、ベンチャー企業単独ではハードルの高いプロセスを全面的にバックアップする体制を整えました。
開発された製品やサービスは、2021年にも実際の事業として形になる予定です。睡眠時無呼吸症候群の治療機器などで国内トップクラスのシェアを持つ帝人ファーマが、自社の既存ルートを活用してこれらの革新的なサービスを全国へ広げていきます。医療費抑制という壁を突破し、患者さんの生活の質を高めるこの試みは、社会課題の解決に向けた素晴らしい挑戦だと言えます。大企業の安定感とベンチャーのスピード感が融合した、今後の展開から目が離せません。
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