昭和のモダン文学がSNSで大バズり!作家・獅子文六の軽快な傑作が今、令和の若者を魅了する理由

昭和の時代に数々のヒット作を生み出した人気作家、獅子文六(ししぶんろく)氏への注目が、今まさに急上昇しています。戦前から新聞連載などを通じてユーモア溢れる軽快な小説を数多く発表してきた彼ですが、没後は多くの作品が手に入らない状態が続いていました。しかしここ数年、熱意ある復刊プロジェクトや特別な展覧会が次々と企画され、その色褪せない魅力が現代に蘇っています。

このムーブメントの火付け役となったのが、2013年から文庫版の復刊をスタートさせた筑摩書房です。なんと計15冊の累計発行部数が27万部を突破するという、出版界でも「静かなブーム」として大きな話題を呼んでいます。SNS上でも「昭和の作品なのに信じられないくらいお洒落で読みやすい」「もっと早く出会いたかった」といった驚きと絶賛の声が溢れ、世代を超えて口コミが広がっている状況です。

特にブームを加速させたのが、書店の店頭に飾られた熱量の高いPOP(ポップ=購買を促す手書きの案内広告)でした。年の差の恋愛をほろ苦く描いた名作『コーヒーと恋愛』の棚には、「こんなに面白い小説が何十年間も読めなかったなんて信じられない」という熱いメッセージが添えられ、多くの読者の心を掴んだのです。担当編集者の窪拓哉氏が学生時代に愛読し、入手困難だった経験から企画したという背景も、作品への愛が感じられて素敵ですね。

実質的な大ブレイクのきっかけは、2015年に復刊された『七時間半』だったと窪氏は語ります。東京と大阪を結ぶ特急列車を舞台にしたこのドタバタ劇は、シリーズの中で最も高い売り上げを記録しました。本を閉じた後のお楽しみである巻末の解説執筆陣も非常に豪華です。『コーヒーと恋愛』の解説は同名楽曲を作曲したシンガーソングライターの曽我部恵一氏、また『沙羅乙女』は実力派俳優の安藤玉恵氏といった、獅子作品を愛する各界の著名人が独自の視点でその魅力を語っています。

かつては時代遅れの作家とみなされた時期もありましたが、今だからこそ新しさを感じてほしいという編集部の願いは見事に届いています。筆者としても、彼の描く人間模様の可笑しみやテンポの良い会話劇は、タイムパフォーマス(タイパ)を重視しがちな現代人にとっても、極上のエンターテインメントとして新鮮に映るのではないかと確信しています。

さらに、没後50周年の大きな節目を迎え、2019年12月からは神奈川県横浜市にある神奈川近代文学館にて「獅子文六展」が絶賛開催されています。会期は2020年3月8日までとなっており、自筆の原稿や貴重な写真を通じて、彼の知られざる素顔に迫ることができる貴重な機会です。この展覧会では、彼が本名である「岩田豊雄」名義で情熱を注いだ、演劇人としての輝かしい足跡にもスポットを当てています。

20代でフランスへ留学した彼は、帰国後に岸田國士氏らとともに有名な劇団「文学座」を立ち上げました。実は、演劇活動だけでは食べていくことが難しかったため、生計を立てる手段として小説を書き始めたという意外なエピソードも残されています。そんな切実な理由から生まれた小説が、時を超えて多くの人々を癒やし、笑顔にしている事実に運命的なロマンを感じずにはいられません。

会場に展示された留学時代の自画像には、お洒落なスカーフに丸眼鏡を身につけた、極めてモダン(現代的で垢抜けた様子)な彼の姿が描かれています。ご子息の岩田敦夫氏の証言によると、当時の日本の一般家庭としては珍しく、食卓には西洋風の料理やワインが日常的に並んでいたそうです。文化人たちと陽気に語らうハイカラなライフスタイルこそが、あの軽妙洒脱な物語を生み出す源泉だったのでしょう。

2020年2月29日には、同文学館にて解説も務めた曽我部恵一氏による特別なトークライブも予定されています。文学という枠組みを軽々と飛び越え、音楽や演劇の世界からも愛される獅子文六氏の作品世界は、これからも私たちの心を豊かに彩ってくれるに違いありません。この機会に、あなたも昭和モダンな読書体験に浸ってみてはいかがでしょうか。

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