企業の信頼を守る?監査法人の「10年継続」が7割超えの理由となれ合い防止のジレンマ

上場企業が自社の決算書をチェックしてもらう会計監査人を、10年以上変更していないケースが全体の7割に達していることが判明しました。これは2020年01月19日時点の日本経済新聞の調査で明らかになったものです。特に味の素は68年、三井不動産は58年という超長期の継続を記録しています。SNS上でも「これだけ長いと癒着が心配」「業務の専門性を考えれば妥当では」など、投資家やビジネスパーソンの間で大きな反響を呼んでいる模様です。

そもそも会計監査人(監査法人)とは、企業の財務諸表が正しく作られているかを第三者の視点で検証する専門家集団のことを指します。日本では2020年03月期から、企業が有価証券報告書に監査人の継続期間を記載することが義務付けられる予定です。これに先駆けて2019年03月期に先行開示を行った83社のうち、なんと57社が10年以上にわたり同じ監査法人を起用し続けていた事実が浮き彫りになりました。

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なぜ変わらない?長期継続に秘められた企業のメリット

なぜこれほど長期間にわたって同じパートナーを選ぶのでしょうか。味の素は「事業リスクの見極めやノウハウの蓄積には時間が必要であり、変更しない方が組織の統治体制(ガバナンス)の向上につながる」と回答しています。また46年継続している日本ユニシスも「自社の事業を深く知っているからこそ、問題の早期発見という利点がある」と述べており、監査法人を変えることでかえってリスクが生じると考える企業が目立つ状況です。

51年の歴史を持つデンソーに至っては「基礎的な事実確認に余計な時間を割く必要がなく、密度の高いチェックが可能」とした上で、同じパートナーを続けることと健全なガバナンスは両立できると主張しています。監査法人の側からも、複雑な企業業務を1、2年で完全に把握して効率的な作業を行うのは到底不可能だという声が上がっており、実務上の負担を考慮すると、同じ関係性を維持する必然性があるのでしょう。

なれ合いを防ぐための対策と変わる企業たちの動向

長年の関係がもたらす「なれ合い」の懸念に対しては、別の方法でガバナンスを確保している企業も存在します。46年継続の三井物産は、監査法人内での責任者(パートナー)を定期的にローテーションさせ、5会計期間を超える関与を禁止する防衛策を講じているようです。しかしその一方で、非財務情報の開示など経理業務が爆発的に増える昨今、監査法人変更にともなう多大な事務負担や費用効率を恐れ、やむを得ず継続しているのが本音かもしれません。

一方で、変革の波も確かに押し寄せています。2019年に監査法人の変更を発表した上場企業は143社にのぼり、2008年の金融危機以降で最多を記録しました。そのうち56社が「長期化」を理由に挙げており、住江織物は50年目の節目で変更を決断しています。また12年継続したMORESCOは、監査役会が自ら「継続期間は最長10年」という明確なルールを定めたことで、交代へ踏み切った模様です。

編集者の視点:欧州の10年ルール見送りと日本の行方

ヨーロッパでは会計不祥事を防ぐため、原則10年を上限に監査法人を変える義務化制度が2016年に導入されました。日本でも同様の議論がありましたが、金融庁は企業の負担増を考慮して導入を見送る方針です。私は、この見送りは一見現実的な妥協案に見えて、議論の風化を招く恐れがあると危惧しています。過去に東芝やオリンパスなどの不正が起きるたびに厳格化が叫ばれながら、結局は有耶無耶になってきた歴史があるからです。

企業の業務に熟知した監査法人による効率性と、なれ合いを排除した客観性のどちらを優先すべきかは非常に難しい問題と言えます。しかし、ローテーションの議論がこのまま迷宮入りしてしまえば、最終的に不利益を被るのは市場を信じて投資する人々です。形だけの内部分担に頼るのではなく、真に第三者の厳しい目が光る仕組みづくりを、日本独自の負担軽減策と両立させながら模索し続けるべきでしょう。

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