自動車業界に押し寄せる電気自動車への移行の波に伴い、心臓部であるモーターの開発競争がこれまでにないほど熱を帯びています。従来のように単体で開発する時代は終わりを告げ、現在は周辺部品と一体化させたモジュール化が主流となりました。
SNS上でも「これからは部品単体ではなくシステムとしての完成度が問われる時代だ」と、技術の転換点に注目する声が多数上がっています。この激変を象徴するように、自動車分野の調査機関であるマークラインズにはモーター関連の依頼が殺到しているそうです。
こうした急激な変化の背景には、2015年に発覚したディーゼル車の排ガス不正問題があります。この事件を契機に世界の主要メーカーが電気自動車の開発へ舵を切ったことで、搭載されるモーターの重要性が一気に跳ね上がったと言えるでしょう。
現在の自動車には1台あたり100個から200個ものモーターが使われており、新型車の登場には性能強化が欠かせません。私は、この開発競争が単なる技術力の競い合いに留まらず、今後の自動車の価値そのものを決定づける重要な局面を迎えていると感じています。
開発を加速させる統合システム「イーアクスル」の衝撃
ここで鍵を握るのが、駆動モーターと制御回路のインバーター、そして減速ギアを一つに統合した「イーアクスル」と呼ばれる画期的な駆動システムです。部品同士を高度に組み合わせるすり合わせ技術により、これまでにない小型化と開発期間の短縮を実現します。
自動運転を見据えた新しい移動サービスの時代において、この効率的な開発手法はすでに確固たるトレンドとして定着しました。しかし、部品メーカーにとっては膨大な開発資源が必要になるという課題と、市場を大きく奪うチャンスという2つの側面が存在します。
電気自動車のモーター技術は今まさに変革期の最中にあり、何が最適な組み合わせなのかはまだ定まっていません。単に部品を繋ぐだけでは十分な性能を出せない難しさがあり、特に走行時のノイズや振動をいかに抑えるかがエンジニアの腕の見せ所となります。
エンジン音が消える電気自動車では、従来のガソリン車よりも大幅な静音化が求められるため、10分の1もの減音を達成しなければなりません。設計段階のシミュレーションだけでは予測できない複雑な共振が起きるため、地道な技術の蓄積が不可欠です。
これらはまさに分解しても真似できないノウハウの塊であり、開発には高い技術力と迅速な意思決定が求められます。だからこそ、この荒波を乗り越えた企業だけが、これからの自動車市場で圧倒的な覇権を握ることができるのだと私は確信しています。
勢力図が激変!業界の巨人と新勢力が激突する外販ビジネス
この巨大な市場で最もアグレッシブな攻勢をかけているのが、車載分野では新興勢力となる日本電産です。同社は世界に先駆けてイーアクスルの量産をスタートさせ、中国や欧州、アメリカなど世界各地に工場を建設して驚異的なペースで受注を拡大しています。
パソコンにおける特定の半導体ブランドのように、電気自動車を開ければ自社のシステムが入っている状態を目指す戦略は非常に見事です。こうした新勢力の台頭に対し、既存の自動車部品の巨人たちも黙って見ているわけではありません。
ドイツの大手メーカーであるコンチネンタルは、2019年10月にパワートレーン部門を分社化し、迅速な経営判断ができる体制を整えました。新会社のビテスコ・テクノロジーズとして、軽量化を武器にした最新のイーアクスルを投入しています。
国内でも2019年4月にデンソーとアイシングループが手を組み、合弁会社であるブルーイーネクサスを設立しました。それぞれの得意技術を持ち寄って開発体制を効率化し、2020年内の量産化に向けて着々と準備を進めている状況です。
トヨタグループの枠を超えて外販を強化する動きは、これまでの系列の壁を打ち破るものであり、業界の危機感の強さが伺えます。自社系列にこだわらずに最適なパートナーと組む決断をしたことは、スピード感が命のEV市場において極めて正しい選択でしょう。
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