日本人と結婚した外国人の方が、知らない間に配偶者から離婚届を提出されてしまうという、信じられないようなトラブルが各地で相次いでいます。配偶者によって署名を偽造されるだけでなく、言葉の壁を利用されて別の書類だと騙されてサインしてしまうケースも少なくありません。
SNS上でもこの問題に対して、「あまりにも不条理で胸が痛む」「国際結婚のリスクとしてもっと周知されるべきだ」といった、驚きと憤りの声が数多く寄せられています。当事者にとっては、まさに青天の霹靂とも言える深刻な事態なのです。
ある兵庫県在住の40代の外国人女性は、夫婦関係が冷え込んでいた数年前に、当時の夫が女性のサインを真似て勝手に離婚届を提出してしまいました。さらに夫は、幼い子どもの親権も自分にあると書類に書き込んでいたのです。
別居後、愛する我が子と会うことすら難しくなった女性は、2019年11月に家庭裁判所での判決を勝ち取りました。裁判所は夫による署名の偽造を認め、離婚自体は無効であると判断を下したのです。
しかし、無情にも子どもを女性の元へ取り戻す訴えは退けられました。数年間にわたって父親と同居してきたというこれまでの実績、すなわち「継続性の原則」が裁判で重視されてしまったためです。
ここで言う「継続性の原則」とは、子どもの養育環境を頻繁に変えることは心理的な負担になるため、現在の安定した生活環境をできるだけ維持すべきであるという、福祉の観点に基づいた裁判所の判断基準のことです。
法律上は離婚が無効となっても、引き離された我が子と一緒に暮らせないというこの現実は、あまりにも残酷ではないでしょうか。一度連れ去られた子どもを取り戻すことがいかに困難であるかを、この判決は浮き彫りにしています。
大阪府にある国際交流協会の相談窓口には、同様の悲痛な訴えが毎年10件以上も寄せられています。日本語が不慣れな配偶者に対して「学校に提出する書類だよ」と嘘をついて、騙し討ちのように署名させる悪質な事例も報告されている状況です。
しかも外国人側にとって、このトラブルは単なる家庭内の問題に留まりません。日本人の配偶者という身分を失うことで、在留資格が消滅してしまい、最悪の場合は日本から強制的に退去させられる恐れすらあるのです。
2018年の統計データによると、日本人と外国人のカップルによる離婚は年間で約1万1000件にのぼります。国際結婚の法律問題に詳しい専門の弁護士も、無断での離婚届提出は決して珍しい話ではないと指摘しています。
それにもかかわらず、言葉の問題や経済的な理由、さらには日本の司法手続きへのハードルの高さから、多くの被害者が法的な対抗手段をとれずに泣き寝入りしているのが悲しい実態でしょう。
なぜ、これほど容易に一方的な手続きが通ってしまうのでしょうか。その背景には、夫婦のサインさえあれば窓口で受理されてしまうという、日本独特の「協議離婚」という非常に簡易的な制度が存在しています。
家族法を研究する専門家によれば、海外の多くの国では、離婚の際には夫婦双方が必ず裁判所やしかるべき行政機関の窓口に直接出向いて手続きを行うのが一般的となっています。
つまり、紙切れ1枚を提出するだけで夫婦関係を解消できてしまう日本は、世界的に見ても極めて特異であり、ある意味では「世界で最も簡単に離婚が成立してしまう国」だと言えるのです。
このような身勝手な離婚を未然に防ぐためのセーフティネットとして、日本の自治体には「離婚届不受理申出」という手続きが用意されています。
これは、あらかじめ市区町村の役所に「自分が窓口に行かない限り、離婚届を受理しないでほしい」という書面を提出しておくことで、相手が勝手に持ってきた書類を完全にブロックできる強力な防衛策です。
しかし、この極めて重要なシステムは日本人ですら知らない人が多く、ましてや外国人住民への認知度は皆無に等しいのが現状です。制度の存在を知らないがために、守れるはずの権利が脅かされているのは大きな問題です。
事態を重く見た支援団体や弁護士らは、2015年に専門の研究会を結成し、多言語での解説動画やパンフレットの制作を始めました。さらに2019年9月には、支援者向けに対策をまとめた実践的なマニュアル本も出版されています。
大切な家族や日本での生活を守るためには、こうした防衛策の知識を広く社会全体で共有していくことが急務です。国籍を問わず、すべての人が不当な手続きによって涙を流すことのない優しい社会の実現を、切に願ってやみません。
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