私たちの食卓に欠かせない「物価の優等生」こと卵の価格に、今大きな変化が起きています。2020年1月20日時点で、東京地区におけるMサイズの鶏卵卸値が1キロあたり170円を記録しました。これは年初からのわずかな期間で6%も上昇したことになり、前年の同じ時期と比べるとおよそ4割も高値になっているのです。お正月の明けたこの時期としては実に3年ぶりの高水準をマークしており、家計への影響を心配する声が広がっています。
インターネット上のSNSでもこの値動きは大きな注目を集めており、「最近スーパーで卵が安売りされなくなった」「お弁当の定番である卵焼きを作るのを少し躊躇してしまう」といった困惑の投稿が相次いでいる状況です。毎日使う身近な食材だからこそ、数十円の値上がりが生活に与える心理的なダメージは決して小さくありません。今回の急激な価格高騰の背景には、一体どのような原因が隠されているのでしょうか。
価格を押し上げている最大の要因は、2019年9月に関東地方を直撃した大型台風の爪痕が今もなお尾を引いていることです。激しい風雨によって養鶏場が甚大な被害を受け、卵を産む親鳥の数が減少してしまいました。さらに、鶏卵の生産者側が市場に出回る流通量をコントロールする「生産抑制」に踏み切ったことも、供給量が大きく減るきっかけとなっています。
ここで、少しだけ専門的な「需給引き締め(じゅきゅうひきしめ)」という仕組みについて解説しましょう。これは市場における商品の「需要(買いたい量)」に対して、「供給(売りたい量)」が少なくなってバランスが引き締まる状態を指します。モノが不足するとその価値が自然と高まるため、今回の卵のように価格がぐんぐんと上昇していく仕組みなのです。
実は2019年の年初を振り返ると、卵を産む親鳥の数が非常に多く、市場は完全な供給過剰に陥っていました。その結果として卵の価格が暴落し、なんと15年ぶりという異例の安値を記録していたのです。生産現場は苦しい状況を強いられていましたが、2019年秋の台風被害や意図的な生産調整が重なったことで、増え続けていた親鳥の数は一転して減少へと向かいました。
日本種鶏孵卵協会が発表したデータによりますと、2019年11月時点における親鳥の飼養羽数は869万3000羽となっており、前年比で1%減少しています。大手の鶏卵卸業者からも「例年であれば年末に売れ残った卵が年明けに持ち越されて安くなるが、今年は持ち越し分が少ない」という声が上がっており、まさに需給が引き締まったことが価格を押し上げる原動力となりました。
筆者の視点といたしましては、今回の値上がりは消費者にとって痛手であるものの、これまでの「安すぎた状況」から脱却し、養鶏農家が健全に経営を続けていくためには必要な適正化のプロセスであると考えます。あまりに安価で買い叩かれる状況が続けば、災害時の復旧もままならなくなってしまいます。持続可能な食卓を守るためにも、私たちはこの変化を冷静に受け止めるべきでしょう。
これからの卵の価格ですが、例年であれば春の需要期に向けてさらに値上がりしていく傾向があります。しかし2020年の冬は記録的な暖冬となっており、冬の定番である鍋物やおでん向けの需要が思うように伸びていません。そのため、ここからさらに一本調子で価格が上がり続けるとは限らないという見方もあり、今後の天候と市場の動きから目が離せない状況が続きます。
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