為替市場で、投資家たちが再び日本円を売る動きを活発化させているようです。アメリカと中国の貿易摩擦が和らいだことや、アメリカとイランによる本格的な軍事衝突が避けられたことで、市場の緊張感が一気にほぐれました。その結果、リスクが非常に高い局面で買われやすい「安全通貨(世界の危機時に価値が下がりにくいとされる通貨)」としての円を手放し、より利益を狙える資産へ資金を移動させる動きが強まっています。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が発表した通貨先物取引のデータによると、2020年1月14日の時点で、円の売り注文が買い注文を上回る「売り越し」の規模が約3万枚に達しました。これはおよそ6週間ぶりの拡大となります。SNS上でも「緊迫していた地政学リスク(特定の地域が抱える政治・軍事的な緊張が経済に与える悪影響)が後退したことで、一安心した投資家の円売りが目立つ」と、現在の値動きに納得する声が多く上がっている状況です。
思い返せば、2019年12月にも米中対立の緩和から円の売り越しは4万枚を超えていました。その後、2020年1月初頭にアメリカがイランの司令官を殺害したことで世界に緊張が走り、一時は1万2000枚まで買い戻される局面もありました。しかし、最悪の事態を免れたことで市場は再び楽観ムードに包まれています。目先は1ドル110円前後で推移する円安基調が維持されるとの見方が大勢を占めているのでしょう。
ただ、現在の相場環境を「政熱経冷(せいねつけいれい)」と呼ぶ専門家もいます。これは政治的な不安要素が消えて市場が熱狂している一方で、実際の経済データは冷え込んでいる状態を指す言葉です。実際に発表されたアメリカの雇用統計は市場の予想を下回っており、国際通貨基金(IMF)も世界経済の見通しを引き下げました。つまり、現在の円安や株高は、実体経済の回復に裏付けられたものではないと言えます。
世界的な金融緩和によって金利が人工的に低く抑えられているため、企業の業績以上に株価だけが膨らんでいるのが現状です。編集部としては、景気の実態を無視した過度な楽観論には強い警戒が必要だと考えます。アメリカ経済の指標が弱ければ、本来はドル安・円高が進むのが自然な流れです。のりしろが消え、市場が急に現実へ目を向けたとき、大きな揺り戻し(急激な相場の反転)が起きるリスクを常に頭に入れておくべきでしょう。
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