アジアの空の玄関口として長く君臨してきた香港国際空港が、歴史的な転換期を迎えています。香港空港管理局が発表したデータによると、2019年の年間旅客数は7153万人を記録し、2018年と比較して4.2%減少したことが判明しました。このマイナス成長は、世界的な金融危機によって経済が大きく冷え込んだ2009年以来、実に10年ぶりの事態です。
このショッキングなニュースはSNS上でも瞬く間に拡散され、多くのユーザーから驚きの声が上がっています。「旅行でよく使っていたから寂しい」「アジアのパワーバランスが変わるかもしれない」といった、先行きを不安視する投稿が相次いでいる状況です。長引く大規模デモの余波は、想像以上に深刻な影を落としています。
2019年の前半を振り返ると、1月から7月までは前年の実績を上回るペースで順調に推移していました。ところが、8月にデモ隊が空港を標的にした抗議活動を展開したことで状況が一変します。これにより、旅客数は5カ月連続で2桁のマイナスを記録し、主要な航空会社が香港便を相次いで減便する事態へと発展しました。
さらに、米中貿易戦争の影響が直撃したことで貨物便も振るわず、取扱量は6.1%減少しています。ここで注目すべきは、香港が苦戦する一方で、中国本土の主要空港が驚異的な猛追を見せている点です。北京首都国際空港が2年連続で1億人の大台を突破したほか、上海浦東国際空港が約7600万人、広州白雲国際空港が7300万人を記録しました。
この結果、香港は旅客数において上海と広州に初めて追い抜かれる形となり、地域の中心的な役割を担う「ハブ空港」としての絶対的な地位が揺らぎ始めています。ハブ空港とは、各地からの路線を集中させ、乗客や貨物を中継する拠点のことで、その地域の経済や物流の心臓部とも言える重要な存在です。
これまでは中国本土と世界を結ぶ唯一無二の架け橋として成長してきた香港ですが、その地理的優位性は変化しつつあります。特に近い距離にある広州や深圳宝安国際空港への機能シフトが顕著です。広州を拠点とする中国南方航空が路線を拡充し、2019年には年間輸送能力を前年比で約1割も増加させました。
また、深圳では周辺都市と空港を結ぶ鉄道が開通し、利便性が飛躍的に向上しています。さらに広東省政府も、2019年5月には国際線乗り継ぎの外国人がビザなしで滞在できる期間を3日間から6日間に延長するなどの施策を打ち出しました。2020年も滑走路の増設や空港拡張といったインフラ整備が加速する見通しです。
かつて2000年代前半まで世界首位を誇っていた香港のコンテナターミナルも、2019年の取扱量が前年比6.3%減の1836万TEUに落ち込み、上海や深圳だけでなく青島にも逆転を許しています。TEUとは20フィートコンテナ1個分を基準とする単位ですが、この数字からも香港の地盤沈下が伺えます。
筆者の視点として、今回のハブ機能の分散は香港の政治的リスクが招いた必然の結果であり、中国本土のインフラ進化のスピードを象徴していると感じます。一度流出した路線や旅客を呼び戻すのは容易ではなく、香港にとっては今まさに正念場です。今後、アジアの空の主導権がどこへ向かうのか、注視していく必要があります。
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