「あの人の名前がどうしても出てこない」「夕方になると、なんだか家族の様子や体調がおかしくなる」。そんな日常のふとした疑問や介護の現場での悩みに、光を照らす画期的な研究成果が発表されました。2020年01月15日、東京大学の喜田聡教授らの研究チームが、私たちの体に備わる「体内時計」が記憶を思い出す仕組みに深く関わっていることを突き止めたのです。
年齢を重ねるごとに増える物忘れや、認知症患者特有の「夕方に症状が悪化する現象」の謎に迫るこのニュースは、SNSでも大きな反響を呼んでいます。ネット上では「祖母が夕方にソワソワする理由が分かった気がする」「体内時計を整えることが記憶力キープに繋がるかも」といった、納得の声や期待のコメントが相次いで寄せられました。
鍵を握る遺伝子「BMAL1」と脳内物質のパズル
研究グループは、全身の細胞に存在して1日のリズムを刻む時計遺伝子「BMAL1(ビーマルワン)」に着目しました。この遺伝子は、私たちの睡眠や目覚めのサイクルをコントロールする、まさに「脳内の時計の針」です。実験において、記憶を司る脳の領域「海馬(かいば)」でこの遺伝子の働きをブロックしたところ、マウスは過去に見た仲間や物体を認識しにくくなってしまいました。
特に興味深いのは、その症状が「夕方」に顕著に現れたという点です。このとき脳内では、快感や意欲に関わる神経伝達物質「ドーパミン」を受け取る細胞表面の受容体が、正常に機能していませんでした。専門的に言えば、体内時計の乱れが脳内の情報伝達のネットワークを妨害し、記憶の引き出しをロックしてしまっていたのです。
物忘れや認知症治療への新たなアプローチ
しかし、この研究は絶望で終わりません。機能低下を起こしている受容体を活性化させる薬剤を投与したところ、マウスの記憶力が見事に回復したのです。これは、体内時計と記憶の結びつきを証明すると同時に、未来の治療薬開発への大きな一歩と言えるでしょう。
これまで、夕方の認知症症状の悪化は、単なる疲労のせいだと片付けられがちでした。しかし、今回の発見によって生物学的な原因の一端が可視化されたことは、医療の歴史において極めて有意義だと私は確信しています。今後、夕方に記憶力が低下する具体的なメカニズムがさらに解明されれば、個々のバイオリズムに合わせたオーダーメイドな認知症治療やケアが実現するに違いありません。
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