東京五輪後の建設用鋼材需要はどうなる?JFE条鋼社長が語る市場のリアルと生き残り戦略

2020年01月15日、建設業界に緊張が走っています。ビルなどの建物を支える柱や梁に使われる「H形鋼」や、コンクリートの強度を高める「異形棒鋼」といった建設用鋼材の国内需要が停滞しているからです。2019年の春先から荷動きが鈍化しており、今も回復の兆しは見えません。こうした状況のなか、大手電力炉メーカーであるJFE条鋼の渡辺誠社長が、現在の厳しい市場環境と今後の見通しについて語りました。

SNS上では「五輪後の反動が本当に始まった」「製造業の落ち込みが建設にも響いている」といった不安の声が広がっています。渡辺社長によると、2019年度の製品出荷量は前年度より約5%も減少する見込みだそうです。特に東京五輪に向けた大型案件が一段落したことに加え、高強度のボルトなどの部品不足により工事が遅れていることも、鋼材の荷動きに急ブレーキをかけた大きな要因となっています。

さらに追い打ちをかけるのが、長期化する米中貿易摩擦です。世界的な経済の冷え込みは国内の製造業にも暗い影を落としており、民間企業の工場投資が目に見えて減少しています。例年であれば秋口は建物の着工が増えて鋼材の出荷がピークを迎える時期ですが、2019年の秋はその賑わいがまったく感じられなかったそうです。2020年の上半期も、建築分野を中心に厳しい冬の時代が続くと予想されます。

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縮む市場と拠点集約による生き残りへの挑戦

中長期的な視点で見ると、日本の建設市場は少子高齢化や人口減少に伴い、確実に縮小へと向かっています。かつて1990年代初頭には年間1300万トンから1400万トンもの出荷量を誇った鉄筋用小形棒鋼ですが、2019年度は750万トン程度まで落ち込む見通しです。渡辺社長は、2021年度以降には700万トンを割り込むという、かなり厳しい未来も想定していると危機感を募らせています。

この激しい価格競争が繰り広げられる「レッドオーシャン(血で血を洗うような激戦市場)」を生き抜くため、同社は2020年01月から生産体制の大胆な再編に踏み切りました。鹿島製造所の棒鋼生産を水島製造所へ移して拠点を集約し、効率的な供給体制を整えるそうです。限られたパイを奪い合うだけでなく、競合のいない「ブルーオーシャン(未開拓の高利益市場)」を目指し、独自の高機能製品の開発にも注力する構えです。

今回の取材を通じて、インフラや建築を支える鉄鋼業界が、時代の大きな転換期を迎えていると強く実感しました。ただ需要の回復を待つのではなく、迅速に生産拠点を再編し、付加価値の高い製品へと舵を切るJFE条鋼の姿勢は、日本のみならず世界経済の荒波を乗り越えるための模範となるでしょう。単なる規模の拡大ではなく、変化に柔軟適応できる企業こそが、次世代の勝者になるに違いありません。

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