人手不足や高齢化が深刻な課題となっている建設業界において、今大きな変革の波が訪れています。その救世主として注目を集めているのが、最先端のデジタル技術を駆使して現場の作業効率を劇的に向上させる「ICT施工」です。
SNSでも「きついイメージの建設現場がスマートになっていくのはワクワクする」「これからの時代に不可欠な技術」と、テクノロジーによる業界の進化に期待を寄せる声が数多く上がっています。
このICT施工とは、情報通信技術(Information and Communication Technology)を建設現場に導入し、一連の工程をデジタル化する生産性向上の取り組みを指します。具体的には、ドローンを使って空から現場の地形を正確に測定し、そこから得られた立体的なデータを基に3次元の設計図を作成します。
作業期間を最大4割短縮する驚異の「アイ・コンストラクション」
国土交通省は2016年から、この測量や施工をデジタル化する「アイ・コンストラクション(i-Construction)」を強力に推進しています。この国を挙げた取り組みにより、現場の作業期間はなんと3割から4割も短縮できると試算されているのです。
こうした背景から、多くの建設会社が「受注できる工事の幅を広げたい」と熱い視線を送っています。その中で、メーカーの立場から現場を支えるのが、日立建機日本株式会社の中国・中四国支社で活躍するICTエンジニアの種慎司さん(35歳)です。
種さんは、中国自動車道のスマートインターチェンジ(ETC専用の高速道路出入り口)を新設する大規模なプロジェクトなどを担当しています。この難しい役割をこなせるエンジニアは、中国地方でまだたったの2人しか存在しません。
ICT施工の現場では、先述の3次元データを油圧ショベルなどの建設機械に組み込みます。これにより、レバーを少し動かすだけで機械が理想の深さや角度を自動で計算して掘り進めてくれる「マシンコントロール機能」が作動するのです。
高価なハイテク重機を支えるのは、元・現場監督の「臆病なほどの慎重さ」
高度な機能を持つICT油圧ショベルは、1台あたり約3000万円と非常に高価な投資となります。それでも日立建機日本における中四国地方でのICT建機の販売額は、2019年度には前年度の2倍にまで急増する見通しとなっています。これほどの急成長を支えているのが、種さんの存在です。
種さんは2017年に同社へ転職する前、中国地方の大手建設会社で10年間にわたり、道路や橋の工事など20件以上の現場を監督してきた経歴を持っています。つまり、顧客の気持ちや悩みが誰よりも分かる「現場のプロ」なのです。
そんな種さんが仕事で最も大切にしているのが、「臆病といえるほど慎重になること」だといいます。最先端の現場には、人工衛星を使った位置情報システムや高度な測量機器など、多くの精密機械が関わっています。
しかし、自然を相手にする現場では、原因不明のデータのズレが発生することも珍しくありません。ほんの数センチメートルの狂いであっても、見過ごせば工事全体の大きな損失に繋がってしまいます。だからこそ、種さんは位置情報の基準となるデータが正しいかを何度も愚直に確認します。
トラブルを乗り越えた「血の通った営業」が人と技術を繋ぐ
いくら素晴らしい技術でも、予期せぬ不調はつきものです。ある盛り土の仕上げ作業中、機器が故障して現場がストップしてしまったことがありました。何度も不具合が続き、オペレーターから「こんなことでは困る!」と激しく怒鳴られたこともあったそうです。
しかし種さんは決して逃げませんでした。月に何度も遠方の現場へ足を運び、泥臭くサポートを続けました。時には、工事の基準となる木杭を打つ「丁張り(ちょうはり)」という準備作業を自ら手伝い、現場の作業員と一体になって汗を流したのです。
半年後、別の現場でその時の担当者と再会した際、種さんは気後れしながらも挨拶に向かいました。すると担当者から「また頼むよ」と笑顔で声をかけられたそうです。トラブルから逃げずに最後まで向き合った姿勢が、深い信頼関係へと変わった瞬間でした。
SNS上でも「最終的には人と人との信頼関係」「どれだけデジタル化が進んでも、泥臭く動いてくれる人が一番強い」といった共感の声が溢れています。革新的なテクノロジーを現場に定着させるために本当に必要なのは、種さんのような相手に寄り添う熱い想いなのでしょう。
【編集部の一言】どれほど優れたAIやロボットが登場しても、それを使うのは人間です。技術の凄さをアピールするだけでなく、現場の苦労を理解し、同じ目線でトラブルを解決してくれる存在がいて初めて、DX(デジタルトランスフォーメーション)は成功するのだと痛感させられます。
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