スマートフォンが私たちの生活に欠かせない存在となる中、アプリ市場の勢いが止まりません。アプリ分析の世界的リーダーである米アップアニーは、2020年4月から日本国内で新たなモバイル広告分析サービスを開始することを決定しました。企業のデジタルマーケティングを強力に後押しするこの一手は、業界に大きな変革をもたらしそうです。SNSでも「ついに日本で本格始動か」「広告効果の可視化が進む」と、マーケターを中心に早くも熱い視線が注がれています。
同社の調査によると、2019年における世界のアプリダウンロード数は、2018年と比べて6パーセントも増加し、2040億件という驚異的な数字を記録しました。この成長を牽引しているのが、アジアの新興国です。中国やインド、インドネシアなどでは、一つのアプリで買い出しから決済、チャットまで完結する「スーパーアプリ」が爆発的に普及しています。シンガポールの「グラブ」がその代表例で、生活インフラとして人々の日常を支えています。
新興国では公共インフラよりも先にモバイル環境が整備されたため、金融とITを融合させた「フィンテック」などの最先端領域において、日本よりも遥かに先を進んでいるのが現状です。「インドのシリコンバレー」と呼ばれるバンガロールのような、未知のIT都市が急成長を遂げています。日本のビジネスパーソンも、これまでの固定観念を捨てて、海外の進化から謙虚に学びに行く姿勢が今まさに求められているのではないでしょうか。
日本国内においてアップアニーのデータ分析サービスは、すでに大手自動車メーカーや電機メーカー、製薬会社など約200社に導入されています。同社はさらなる飛躍を目指し、2019年9月にモバイル広告分析を手掛ける米リブリングを買収しました。これにより、アプリの利用データと広告の分析を組み合わせた、これまでにない包括的なソリューションの提供が可能となります。日本法人の人員も2020年中に1.4倍へ増強する計画です。
多くの企業がモバイル広告を導入しているものの、その効果を十分に引き出せているとは言えません。広告代理店への手数料や予算配分が適切なのか、自社で判断に迷うケースが多いためです。同社はデータを可視化するだけでなく、課題に対する具体的な「処方箋」まで提示する仕組みを整えています。これによって企業は、闇雲な広告投資から脱却し、費用対効果を最大化するデータ駆動型のマーケティングを実践できるようになるでしょう。
国内の中小企業の中には、まだまだデジタル化の波に乗り遅れている店舗が少なくありません。小売店などはアプリを導入して、顧客との結びつきや愛着を示す「エンゲージメント」を高めることが急務です。実店舗は消費者が特別な体験を得られる貴重な場所だからこそ、デジタルと融合させることで価値が倍増します。モバイルを単なる宣伝ツールではなく、生活者の行動や本音を深く理解するための道具として捉え直す視点が必要です。
こうしたアプリの活用には初期コストがかかるため、単年度のROI、つまり「投資利益率」だけで成果を焦ってはいけません。少なくとも3年先を見据えた長期的な経営判断ができるかどうかが、デジタル転換を成功させる分かれ道です。また、個人情報の取り扱いに関する企業のガバナンスも問われています。今後は信頼できるアプリ事業者が選別される一方で、デジタルネイティブである「ジェネレーションZ」世代の台頭にも注目が集まります。
1990年代後半から2000年生まれのZ世代は、利便性のために位置情報などを提供することへの心理的ハードルが低い傾向にあります。個人情報を頑なに秘匿するという古い価値観をアップデートしていくことも、これからの時代には必要かもしれません。全世界のスマホ利用者の1日平均利用時間は、2019年には前年より40分も増えて3時間40分に達しました。消費行動がモバイルへシフトする中、トレンドの把握は不可欠です。
日本でも大手IT企業同士の経営統合により、1億人規模の顧客基盤を持つ日本版スーパーアプリの構想が動き出しています。膨大なデータから個人の好みを分析し、最適なサービスを届ける仕組みは、今後の市場ニーズに完璧に合致しています。競合となるネット広告専業企業も動画広告などに注力する中、アップアニーがデータの掛け合わせによってどのような独自の付加価値を提示していけるのか、その手腕から目が離せません。
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