日本のモータリゼーションを牽引してきた偉大な名車たちが、時代の転換期を迎え、静かにその歴史に幕を閉じようとしています。トヨタ自動車が誇る洗練された高級セダン「マークX」や、個性的なフォルムで一世を風靡した日産自動車の「ジューク」などが、2019年12月末までに相変わらずの惜しまれつつも生産終了を迎えました。国内におけるセダン市場の低迷に加え、世界的な規制強化が自動車メーカーの決断を後押しした格好です。かつてのスター車種であっても生き残ることができない、厳しい現実がそこにはあります。
2019年12月23日にトヨタの元町工場で開催された記念イベントでは、これまでの輝かしい功績を称える温かい声が響き渡りました。1968年9月21日の「マークⅡ」誕生から数えて半世紀以上、累計生産台数は約688万台という驚異的な数字を記録しています。SNS上でも「父親が大切に乗っていた」「日本の憧れがまた一つ消えていく」といった、世代を超えた愛着やノスタルジーに満ちた投稿が相次ぎました。多くの人々の人生に寄り添い、ドライブの楽しさを教えてくれた特別な存在であったことが窺えます。
しかし、現代の自動車産業は「CASE」と呼ばれる巨大な変革の波に直面しているのです。これは、C(コネクテッド・つながる車)、A(自動運転)、S(シェアリング)、E(電動化)という4つの先端技術分野を指す総称になります。この新しい領域で主導権を握るためには、天文学的な開発投資が欠かせません。結果としてメーカー各社は、収益性の低いモデルを整理し、未来の技術へ経営資源を集中させる選択を迫られています。いつまでも過去の栄光に縋っているわけにはいかないのが、産業界のシビアな側面でしょう。
この動きはトヨタだけに留まらず、日産自動車でも「キューブ」の国内生産を終えるなど、聖域なき車種の絞り込みが敢行されています。さらに海外に目を向ければ、ドイツのフォルクスワーゲンも2019年7月10日に、約80年もの歴史を誇る「ビートル」の歴史にピリオドを打ちました。私個人としては、移動の道具以上の価値を持っていた情緒ある車が消えゆくのは寂しい限りですが、この淘汰は自動車がより安全でクリーンな乗り物へと進化するための、避けては通れないポジティブな試練であると確信しています。
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