2020年02月04日、いよいよ東京オリンピックの開催が目前に迫る中、建設業界は一つの転換期を迎えていると言えるでしょう。SNS上でも「五輪後のゼネコンはどうなるの?」「建設ラッシュが終わったら不況が来るのでは?」といった不安の声がしばしば見受けられます。
そんな中、日本の総合建設業いわゆるゼネコンの大手である大成建設が、次なる成長へ向けた戦略を明らかにしました。2020年度に中期経営計画の最終年度を迎える同社ですが、トップである村田誉之社長の言葉からは、現状に対する強い危機感と未来への明確なビジョンが窺えるのです。
五輪特需からの脱却と地方での新たな需要開拓
中期経営計画とは、企業が数年先を見据えて策定する事業の基本方針を指します。大成建設は2020年度末の売上高を1兆8700億円、最終利益を1300億円とする高い目標を掲げていますが、村田社長は進捗状況が厳しいことを率直に認めています。
その背景には、予想以上に進む競争環境の激化が存在するようです。少し前までは発注者側にも施工会社を早く決めたいという焦りがありましたが、現在ではその感覚が薄れ、入札に参加するゼネコンが増加傾向にあります。これまで工場などの案件に参加しなかった企業までが顔を出すようになっているそうです。
この難局を乗り越えるため、同社は2019年度の受注活動をさらに強化し、来る2020年度の売り上げ確保に全力を注いでいく構えです。注目すべきは、需要の中心が東京の一極集中から地方へと波及している点でしょう。とりわけ大阪や九州エリアの活況に合わせて、社員の配置転換も柔軟に行われています。
また、大成建設は他社に比べて社員数が比較的少ないという特徴を持っています。そのため、現場の技術者が本来の工事関連業務に専念できるよう、内勤の事務系社員が現場業務の一部をサポートする体制構築を進めているとのこと。限られた人材を最大限に活かす、非常にスマートな経営判断だと感心させられますね。
グローバル市場での勝機と利益率向上のカギ
国内事業の強化と並行して、同社が大きな期待を寄せているのが海外事業の拡大です。今期は2019年09月末時点での連結海外受注高が238億円でしたが、通年では1755億円に達する見通しを立てています。海外において、トップレベルの大型受注を獲得できる明るい兆しが見え始めているようですね。
かつては海外工事をすべて自社単独で手掛けていた同社ですが、現在は現地のゼネコンやグローバル企業と連携する手法へシフトしました。現地の強力なサプライチェーン(資材調達などの供給網)を持つ企業と手を組むことは、ビジネスの安定化において非常に合理的で賢明な選択だと言えるでしょう。
一方で大きな課題となるのが、現在約2パーセントにとどまっている低い利益率の抜本的な改善です。村田社長は、ビジネスとして成立させるためには個人的な感覚として5パーセント程度の利益率が必要不可欠だと語っています。海外事業は失敗した際の損失リスクも大きいため、案件の慎重な見極めが求められます。
政府開発援助と呼ばれるODA(途上国への経済援助)だけに頼っていては、事業規模の拡大に限界が生じます。大成建設の持つ高度な技術力を正当に評価してくれる、利益率の高い大型案件をいかに発掘するかが、今後の飛躍の命運を握ると言っても過言ではありません。
私個人の編集者としての意見ですが、2000年代半ばに海外事業で苦い経験を持ち、堅実な守りの経営を貫いてきた大成建設が、再び世界へ打って出る姿勢には大きな感銘を受けました。国内市場がいずれ縮小に向かう中で、規模と利益の両方を追求する同社の果敢な挑戦は、日本の建設業界全体を牽引する力強い一歩になるはずです。
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