日本国内における携帯電話の市場が、政府による異例の介入によって奇妙な局面を迎えています。2019年10月に通信料金の引き下げを目的とした新しいルールが施行されてから、初めてとなる大手キャリアの四半期決算が2020年2月7日までに出そろいました。事前の予想では収益悪化が懸念されていましたが、蓋を開けてみれば驚くべき結果となりました。2019年10月から2019年12月までの期間において、ソフトバンクが前年同期比で15%増、KDDIが11%増と、ともに2桁の営業増益を記録したのです。
この増益の背景には、実に皮肉な「ねじれ構造」が存在しています。今回の法改正に盛り込まれた「端末割引の上限2万円制限」というルールにより、これまで当たり前に行われていたスマートフォンの過度な安売りが厳しく規制されることになりました。その結果として新規の端末販売台数は大幅に減少しましたが、それと同時に、携帯会社が顧客獲得のために投じていた多額の販売促進費、つまり値引きの原資となるコストが浮いた形になり、企業の利益を押し上げるという奇妙な現象が起きたのです。
ネット上やSNSではこの事態に対し、「毎月の通信料金が安くなるのを期待していたのに、端末が高くなっただけで月謝は下がらない」「これでは単に携帯会社が儲かるだけの仕組みではないか」といった不満や困惑の声が続出しています。政府が意図した「高すぎる通信料の是正」とは裏腹に、消費者が受ける恩恵は極めて限定的なものに留まっているのが現状です。さらに、違約金の上限が1千円に下がったにもかかわらず、キャリア間の乗り換え競争はまったく活発化しておらず、解約率はむしろ低下しています。
このように料金競争が停滞している最大の要因は、新規参入を予定している「楽天」の出方を大手が静観しているためです。独自の回線網を持つ第4のキャリアとして期待される楽天は、当初の予定から商用サービス開始を延期し、2020年4月に本格参入を計画しています。既存の大手3社は、楽天がEコマースなどの本業との相乗効果を狙って破壊的な低価格プランを打ち出してくるのではないかと、並々ならぬ警戒感を募らせています。真の価格破壊が起きるかどうかは、今春の動向に懸念が集まっています。
編集部としては、今回の「官製値下げ」の試みは完全に空回りしていると指摘せざるを得ません。市場の健全化を謳いながら、結果として消費者の買い替えサイクルを鈍らせ、家電量販店の売り場を冷え込ませている現状は本末転倒です。大手が目先の端末コスト削減で得た「あぶく銭」のような増益に甘んじられる期間は短いでしょう。市場が飽和する中で、各社はスマホ決済などの非通信事業への投資を急いでいますが、こちらも依然として赤字が続く消耗戦であり、3社寡占による高収益の時代は終わりを迎えるはずです。
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