次世代の超高速通信規格である「5G」の導入を控え、世界各国がある大きな決断を迫られています。それは、短期間で通信業界の覇権を握った中国の巨大IT企業、華為技術(ファーウェイ)の製品を自国の通信インフラに採用するか否かという問題です。この通信機器の選定は、国家の安全保障に直結する極めてデリケートなテーマとして、世界中で激しい議論を巻き起こしているのです。
2020年1月下旬、イギリス政府が通信網の一部に同社製品の導入を容認する方針を発表したことで、この議論は新たな局面を迎えました。SNS上では「最先端技術を安く使えるのは消費者としてありがたい」という期待の声が上がる一方で、「機密情報が隣国に漏洩するのではないか」という不安のつぶやきも多数見られ、タイムラインは賛否両論の意見で大きく揺れ動いています。
一方で、安全保障を最優先するアメリカ政府は、イギリスのこの決断に対して猛烈に反発しています。米国はすでに同社製品を全面的に締め出す方針を固めており、オーストラリアや日本もこの強硬な路線に追従する構えを見せてきました。これに対してドイツなどの欧州諸国は、イギリスと同様に条件付きでの受け入れを検討している状況であり、国際社会の足並みは見事に二分されています。
しかし、排除派と容認派という対立の構図は見かけ上のものに過ぎないと私は考えます。なぜなら、双方とも「中国製機器の採用には相応の危険が潜んでいる」という共通の危機感を抱いているからです。中国では2017年6月に国家情報法という法律が施行され、いかなる組織や個人も国の情報活動に協力せねばならないと定められました。これにより、企業の意志に関わらずデータが政府に渡るリスクが指摘されています。
こうした背景から、イギリスの専門機関も同社を「高リスクな業者」と位置づけ、通信網の根幹となる重要部分への使用を禁止する厳しい制約を設けました。ここで言う通信網の中核とは、個人情報や通信データが集中して処理される、いわばネットワークの「心臓部」に当たるシステムを指します。いくら同社の技術が安価で優れていても、心臓部を委ねるリスクは冒せないという冷徹な判断でしょう。
寡占化を打破する技術の標準化と日本企業の再起への道筋
この根深い懸念を解消するためには、中国側が国際社会の信頼に足る法制度の改革を行うことが不可欠です。しかし、他国の出方を待つだけでは進展はありません。私は、特定の巨大企業に依存しすぎない「通信のオープン化」を世界規模で推し進めることこそが、最も現実的かつ健全な解決策であると確信しています。特定のメーカーに縛られない共通の標準規格を作れば、市場の健全な競争が守られます。
実は、かつてコンピュータ業界が歩んだように、現在の通信機器市場にも仕様を共通化して新規参入を促す「標準化」の波が押し寄せています。これによって多くの企業が自由に開発へ参加できるようになり、一社への過度な依存から脱却できるのです。世界市場で苦戦を強いられてきたNECや富士通といった日本企業にとっても、この地殻変動は技術力を証明し、世界の表舞台へ返り咲く絶好のチャンスとなるはずです。
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