自動車業界にいま、未曾有の大変革期が到来しています。全国の自動車販売会社、いわゆるディーラーの間で、かつてない規模の統合や合併の波が押し寄せているのです。背景にあるのは、人口減少や若者の車離れ、さらには1台の車を複数人で共有するカーシェアリング市場の急速な拡大です。これにより、新車が売れにくいという厳しい逆風が吹き荒れています。こうした市場の縮小という大きな危機を乗り越えるため、自動車メーカー各社は今、「強い販売店」を作り上げるための組織改革を急ピッチで進めている状況です。
特に注目を集めているのが、業界の巨人であるトヨタ自動車の動きです。2020年5月に予定されている、全販売店での全車種併売化に向けて、グループ内の再編が加速しています。例えば横浜市を拠点とするKTグループでは、トヨタカローラ横浜やネッツトヨタ湘南をはじめとする傘下の4社を同月に合併することを決定しました。これまで「カローラ店」や「ネッツ店」といった販売チャネルごとに分かれていた取り扱い車種の垣根をなくすことで、試乗車の共有や広告宣伝費の一本化が可能となり、大きなコスト削減が見込めます。
この動きは神奈川県内だけにとどまりません。愛知県のATグループでも傘下4社の統合が検討されるなど、全国規模で再編のドミノ倒しが始まっています。トヨタは当初、この全車種併売の計画を2022年から2025年にかけて緩やかに実施する予定でした。しかし、想定を超えるスピードで市場環境が変化していることから、「販売店にまだ体力が残っているうちに断行すべきだ」という経営陣の強い危機感により、2020年5月への大幅な前倒しが決まったのです。業界トップのトヨタでさえ、これほどのスピード感を求めています。
一方、これまで効率化の面で遅れをとっていたホンダや三菱自動車も、自社の直営販売店の削減に向けたドラスティックな大手術に踏み切りました。ホンダはこれまで31社あった直営販売店を2019年中に25社へと減らし、さらに2020年4月までに2社を統合する計画を進めています。これは実に3割近くの削減にあたります。さらにホンダは、全体の9割を占める地場系の独立資本ディーラーに対しても、2019年11月27日に開催された年次大会の場で、年度内に単独で生き残るか合併するかの決断を迫るという強い姿勢を示しました。
また、三菱自動車も2020年4月に西日本三菱自動車販売と中部三菱自動車販売を統合する方針を固めました。2019年4月にも東日本エリアの統括会社を統合したばかりであり、全国5ブロックあった管理体制を3ブロックへと集約します。こうした間接部門の効率化により、余剰となった人員を最前線の営業部門へと配置転換し、現場の販売力を底上げする狙いです。ホンダや三菱自動車は、トヨタに比べて1店舗あたりの新車販売台数が少ないという課題を抱えており、規模の拡大による経営基盤の強化が何よりも急務となっています。
SNSなどのネット上では、このディーラー再編ニュースに対して「昔ながらの馴染みの担当者が変わってしまうのは寂しい」「車を買う選択肢が減るのではないか」といった、ユーザーからの不安や惜しむ声が数多く上がっています。しかしその一方で、「これだけ車が売れない時代なら、統合して経営を安定させるのは当然の戦略」「店舗が大型化してサービスが向上するなら歓迎したい」というように、時代の流れを冷静に受け止めるポジティブな意見も多く見られ、消費者の間でも非常に関心の高いトピックとなっています。
自動車業界におけるこれほどの本格的な大合理化は、実は2000年代前半以来の出来事となります。当時のバブル崩壊後の市場縮小期には、主に「クリオ」「ベルノ」「プリモ」といった販売チャネルそのものを一本化する対策が主流でした。しかし今回の再編は、単なる店舗の統廃合という「守り」の施策だけではありません。むしろ、自動運転技術や安全装置の普及に対応するための講習拠点を確保したり、月額定額制で車を利用できる「KINTO」のような新しいサブスクリプションサービスの基盤を整えたりする「攻め」の側面が強いのです。
日本自動車販売協会連合会の予測によると、2040年度の国内新車販売台数は2018年度比で約3割も落ち込むとされています。このように新車販売が構造的に減少していくなかで、販売店が生き残るためには、店舗の改装や最新設備への投資を継続できる体力が必要です。私は、今回の再編は単なる企業の都合ではなく、消費者がこれからも安心して最先端のモビリティサービスを受け続けるために避けては通れない、前向きな構造改革であると考えます。メーカーと販売店が危機感を共有し、どれだけ魅力的な拠点へと生まれ変われるかが勝負です。
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