日本の化学業界を牽引する総合化学メーカーの三菱ケミカルホールディングスが、苦境に立たされています。同社は2020年2月6日、2020年3月期の連結純利益が前期に比べて52%も減少する見通しであると発表しました。最終的な利益の着地は810億円となる模様で、これは23%減を見込んでいたこれまでの計画をさらに500億円も下回る衝撃的な結果です。業績の引き下げは2019年11月に続いて今期2回目となります。
このニュースに対し、SNS上では「世界的企業ですら新型肺炎の打撃をこれほど受けるのか」「製造業全体の冷え込みが心配」といった、今後の経済への不安を募らせる声が数多く寄せられています。今回の歴史的な大失速の背景には、一体どのような構造的な問題が潜んでいるのでしょうか。編集部としては、中国市場への依存度が極めて高い現代のサプライチェーンが抱える、脆さやリスクが浮き彫りになった事態であると捉えています。
伊達英文最高財務責任者は記者会見の場で「市場における需要の冷え込みが想定以上に深刻である」と危機感を露わにしました。企業の総売上を示す売上収益は、従来予測から1350億円も目減りして3兆6300億円に沈む見込みです。さらに、企業の本来の稼ぐ力を示す「コア営業利益」も、33%減の2100億円へと下方修正されました。これは一時的な損益を除外した本業の調子を測る重要な指標ですが、その数値も大きく悪化しています。
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスによる肺炎の拡大は、同社の生産現場を直撃しました。中国政府による移動制限や春節休みの延長措置に伴い、現地工場の稼働停止が長期化しているためです。これにより、コア営業利益が30億円分も押し下げられる計算を急遽織り込みました。加えて、世界トップシェアを誇るアクリル樹脂原料「MMA」の価格急落も痛手です。1トン当たり1536ドルまで値下がりし、利益を大きく圧迫しています。
今回の業績悪化をさらに加速させたのが「のれん」の減損処理です。のれんとは、企業を買収した際に支払った金額と、その企業の純資産との差額であり、将来の「ブランド力や見えない価値」を資産として計上したものを指します。今回は医薬品向けカプセル事業の価値を見直した結果、約170億円もの損失を帳簿上に計上することとなりました。自動車や半導体向けといった、これまで好調だった高付加価値分野も一様に足元をすくわれています。
鉄鋼生産の停滞に伴う炭素事業の不調も重なり、2019年4月から2019年12月期までの連結決算は、純利益が前年同期比で54%減の762億円という厳しい数字に着地しました。一部では市場の底打ちを期待する声もありますが、先行きは依然として視界不良です。私たちは今こそ、特定地域への依存を分散させる戦略への転換期に立ち会っているのかもしれません。この難局を日本のメガ化学がどう乗り越えるのか、注視が必要です。
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