秋田の美食界に、非常にワクワクするような一大プロジェクトのニュースが飛び込んできました。居酒屋チェーンなどを展開する株式会社ドリームリンクが、秋田県男鹿市にて岩ガキの養殖実証試験をスタートさせます。今回の試みは、地元である秋田県漁業協同組合北浦支所の「戸賀湾養殖研究会」が、男鹿市からのバックアップを受けて実施するものです。SNS上でも「男鹿産の岩ガキが食べられるなんて楽しみ」「漁師さんたちを応援したい」と、地元の新たな特産品誕生への期待が早くも高まっています。
この一大事業を技術面で牽引するのは、カキ養殖の本場である広島県廿日市市に拠点を構える有限会社川崎水産です。同社の川崎健社長による熱心な指導のもと、2021年の夏に8センチメートルほどの小ぶりで愛らしい岩ガキを初出荷することを目指しています。異業種や地域を越えた強力なタッグが、どのような化学反応を起こすのか非常に楽しみですね。ビジネスの枠組みを超えた、地方創生への熱い情熱がひしひしと伝わってくる素晴らしい取り組みだと感じます。
事の発端は、ドリームリンクの村上雅彦社長が、外食業界向けオンラインサービスを運営するインフォマートを介して、川崎社長へ協力を要請したことに始まります。熱意を受け取った川崎社長は、2018年の夏以降に何度も現地へ足を運びました。漁師6人で構成される戸賀湾養殖研究会らと絆を深め、2019年からは岩ガキの赤ちゃんにあたる「種ガキ(稚貝)」の採取を本格的に開始したのです。種ガキとは、カキの養殖を始めるための初期段階の貝のことで、これが立派なカキへと成長していきます。
実は、同研究会にとって今回の挑戦は、並々ならぬ決意が込められたリベンジでもあります。かつて、冬の激しい時化(しけ)によって養殖施設が破壊されるなどの大打撃を受け、岩ガキ養殖を一度は断念せざるを得なかった苦い過去があるからです。これまでは、海中にホタテの貝殻を吊るして天然の岩ガキを付着させる「天然採苗(てんねんさいびょう)」という手法を行い、全国の漁協へ種ガキを出荷する裏方に徹していました。それだけに、自らの手で大人のカキまで育てる今回のプロジェクトにかける想いはひとしおでしょう。
指導にあたる川崎社長は、養殖期間をあえて2年という短期間に設定し、サイズは小さめながらも中に旨味がぎゅっと凝縮された、身の密度の高い極上のカキに仕上げたいと意気込みを語っています。また、ドリームリンクの村上社長は、この男鹿の岩ガキを独自のブランドとして確立させ、地域の漁師の方々の収入アップに繋げたいという持続可能なビジョンを掲げました。こうした生産者の生活を守り、地域経済を活性化させようとする姿勢こそ、現代のフードビジネスに最も求められている要素ではないでしょうか。
現在、日本国内における岩ガキの養殖は、島根県や京都府といった地域が主な産地として知られています。もし、この男鹿市での養殖事業が軌道に乗って出荷が実現すれば、岩ガキ養殖の歴史において「本州最北」の地となる見込みです。北の大自然が育む冷たくて清らかな海で育ったカキは、きっと他にはない濃厚でクリーミーな味わいをもたらしてくれるに違いありません。2020年02月05日、東北の海に新たな希望の光が灯った瞬間を、私たちはこれからも全力で応援していきたいものです。
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