島根県松江市で工業用包装資材の製造販売を展開する大昌が、一般の生活者へ向けた新しい段ボール製品の製造販売事業へ参入します。これまでに培った高い技術力を活かし、お茶席を椅子に座って楽しめる「立礼棚(りゅうれいだな)」や、子ども向けの本棚や椅子などを開発しました。2020年3月から公式ホームページなどを通じて、全国からの注文生産の受け付けを開始する予定です。木の温もりを感じる従来の木製家具に比べ、非常に軽くて価格が抑えられており、誰でも簡単に組み立てられる点が大きな魅力と言えます。
今回開発された「立礼棚」とは、正座をせずに椅子に腰掛けた状態でお茶を点てたり、お茶をいただいたりするための専用の机や椅子のセットを指します。足腰が弱い方や、日本の伝統的な正座の姿勢が苦手な方でも、気軽に茶道の世界に触れられるのが特徴です。松江市は古くから豊かな茶の湯文化が息づく街であり、昨今では海外からの観光客の間でも茶道への関心が急速に高まっています。大昌はこうした時代の変化や地域文化の需要に着目し、今回のユニークな新商品の開発へと舵を切りました。
この立礼棚セットは、お茶を点てるためのお点前台とサブ台、そして丸椅子の3点で構成されており、カラーはシックな黒と清潔感のある白の2色が用意されています。面ファスナーと差し込み構造を採用した組み立て式であるため、工具を使わずに簡単に設置や解体ができるのが利点です。すべての重量を合わせてもわずか8.2キログラムしかなく、同等の大きさを持つ一般的な木製品と比較して数分の1の軽さを実現しました。女性やシニアの方でも、楽に収納や持ち運びができる設計に驚かされます。
「段ボール製だと強度が心配」という声が聞こえてきそうですが、その心配はまったく無用です。この製品には、20キログラムもの重さに耐えられるように内部の構造を工夫した、頑丈な「積層(せきそう)段ボール」が使われています。積層段ボールとは、何枚もの段ボールシートを何層にも重ね合わせて強度を劇的に高めた特殊な資材のことです。さらに、天板には水濡れに強い塩化ビニールの樹脂板を採用し、厚さ1.6センチメートルの側面も段ボールの断面が見えないよう樹脂で美しくカバーされています。
天板の上に合計20キログラム以上の茶器などを置いても、バランスを崩して倒れる心配はありません。この本格的なセットが5万円前後という、木製の伝統的な立礼棚に比べて手頃な価格帯で提供されます。注文を受けて自社工場で製造された後、1週間以内に発送されるスピーディーな体制も嬉しいポイントです。SNS上でも「これならマンションのリビングでも気軽に茶道の練習ができる」「軽くて片付けが簡単だから、おもてなしの幅が広がりそう」といった期待に満ちた声が寄せられています。
さらに大昌では、子ども向けの本棚などの家具も展開していく方針です。ここでは同社が誇る「CAD(キャド)」システムがフルに活用されます。CADとは、コンピューターを使って正確な設計図面を作るシステムのことです。このデジタル技術を用いることで、部屋の広さや家具の隙間に合わせた自由なサイズ展開が可能になります。縦60センチメートル、横50センチメートル、高さ120センチメートルの本棚の場合、1万円前後での販売を予定しており、限られたスペースを有効活用したい家庭に最適です。
1957年に設立された大昌は、機械などを梱包する工業用段ボールが主力の企業であり、2019年5月期には約10億円の売上高を誇ります。しかし、国内需要の停滞や製造業の海外移転といった厳しい市場環境を見据え、一般消費者向けという新たな市場への挑戦を決めました。同社が持つ高性能な設計設備と2台の加工機を活用し、顧客の要望に合わせたものづくりを行います。4月以降は設計専門の社員を2人に増やし、サポート体制をより強固なものにしていく構えです。
下手将人社長は、一般向けビジネスへの進出が社員の設計技術や発想力を鍛え、企業の認知度向上にも繋がると確信しています。5年以内に総売上高の2〜3%をこの一般向け部門で達成するという目標を掲げており、その未来は明るいでしょう。老舗企業の伝統と最新の設計技術が融合したこの段ボール家具は、私たちの暮らしに新しい快適さをもたらしてくれます。エコロジーで実用的な新しい家具の選択肢として、今後の市場への広がりが非常に楽しみな取り組みだと私は強く感じます。
コメント