新潟県三条市に拠点を置く液体保存容器メーカーの悠心(ゆうしん)が、レトルト食品の生産現場に革新をもたらす、高効率な自動充填(じゅうてん)装置を開発し、2019年6月28日に発表しました。この新装置は、充填方法を抜本的に見直すことで、従来の最大3倍という驚異的な作業効率の向上を実現しています。さらに、商品の不良率も大幅に引き下げられる見込みで、人手不足が深刻化する食品メーカーにとって、まさに救世主となるでしょう。
今回発売された新開発の自動充填装置は「ユニバーサルタイプスリー」と名付けられ、価格は3,500万円(税抜)から設定されています。カレーやパスタソースといったレトルト食品を包むフィルムを、最大で一度に5列まで並べることができ、例えば40ミリリットル入りの製品であれば、1分間に従来比3倍の240袋もの高速生産が可能になりました。この装置の特筆すべき点は、容量の汎用性の高さで、少量サイズの40ミリリットル入りから、大容量の8リットル入りまで幅広く対応できる優れものです。もちろん、レトルト食品だけでなく、しょうゆやドレッシングなどの液体充填にも応用が利く設計になっています。
作業効率と品質を両立!高圧密閉とFSSが不良品を激減させる
この装置が作業効率だけでなく、品質向上をも実現した秘訣は、高圧密閉という新たな充填技術にあります。充填後にフィルムを密封する際、その速度をあえて従来の装置より緩やかにし、代わりに高い圧力でしっかりと密閉します。これにより、レトルトパウチ内の具材がわずかな隙間から漏れてしまうのを防ぎ、不良品の発生を劇的に抑えることができるのです。また、密閉後のフィルムを精密に切断する技術も新たに導入しており、包材であるフィルムの使用量を従来より1~2割も削減できるため、コスト削減にも貢献すると期待されます。
さらに、商品に不良品が混入することを徹底的に防ぐ、悠心独自の「充填支援システム(FSS)」も搭載されました。FSSは、充填中にフィルムの密閉状況をカメラで常に監視し、その画像データから不良品の兆候を検知すると、自動でその製品を取り除くシステムです。密閉が不十分な場合、フィルムにシワが寄ったり、空気が入り込んだりする可能性があるのですが、このシステムにより、そうした不良品が梱包されてしまう前に確実に排除されます。一連の不良品削減策を組み合わせた結果、不良率は従来の「100万個に数個」という水準から、「1億個にわずか1個」という驚異的なレベルまで低減できる見通しだというのですから、その品質保証に対する貢献度は計り知れないでしょう。
2007年に設立された悠心は、これまでしょうゆやドレッシングなどの液体を真空に近い状態で保存できる袋式容器「PID(パウチ・イン・ディスペンサー)」を主力事業として成長してきました。PIDとは、液体を袋(パウチ)に入れて、ディスペンサー(抽出装置)で使えるようにした保存容器のことで、賞味期限の延長や鮮度保持に役立つ製品です。2018年1月期の売上高は約4億円でしたが、今後はこの革新的な充填装置を新たな収益の柱として育成し、2022年1月期には売上高を倍増させて8億円達成を目指す方針です。
食品製造業における人手不足は深刻化しており、自動化・省人化ニーズは高まる一方です。また、消費者側も食の安全に対する意識が非常に高いため、品質の徹底は必須の課題と言えるでしょう。この「ユニバーサルタイプスリー」は、生産効率を飛躍的に高めつつ、不良率を極限まで下げるという、相反しがちな二つのテーマを見事に両立させている点が画期的です。特に、不良率が「1億個に1個」という目標値は、食品メーカーの品質管理にとって新たなベンチマークとなり得ると考えられます。加えて、同社は2022年には人工知能(AI)を導入する計画も持っており、さらなる進化と、食品製造現場の自動化・高度化を牽引してくれることに期待したいところです。
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