2019年5月30日、米中のハイテク覇権争いが新たな局面を迎えました。中国の通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)の本社がある広東省深セン市で、同社の宋柳平(ソン・リウピン)上級副社長が記者会見を開き、アメリカによる事実上の輸出禁止措置に対して強烈な反論を展開したのです。宋氏は、今回の制裁によってファーウェイと取引のある「1200社以上の米国企業が損害を受ける」と警告しました。これは、トランプ政権が振り上げた拳が、自国の産業界をも直撃する「ブーメラン」になりかねないことを示唆しています。
実際に、アメリカ国内ではすでに中堅の半導体メーカーが業績の下方修正を迫られるなど、禁輸措置の副作用が表面化し始めています。グローバル経済においてサプライチェーン(供給網)は複雑に絡み合っており、巨大な顧客であるファーウェイを失うことは、多くの米国企業にとって死活問題だからです。宋氏は今回の措置を「危険な前例を作ることになる」と批判し、行政や司法を通じた対抗手段も辞さない構えを見せています。
「略式判決」で早期決着へ。法廷闘争の行方
ファーウェイの反撃は言葉だけではありません。同社は2019年5月29日、米政府機関による同社製品の調達を禁じた「2019年度米国防権限法」は米憲法違反だとして起こしていた訴訟について、テキサス州の裁判所に「略式判決」を申し立てました。聞き慣れない言葉かもしれませんが、略式判決とは、事実関係に争いがない場合に、正式な裁判手続き(陪審員による審理など)を省いて、裁判官が迅速に判決を下す手続きのことです。裁判の長期化を避け、早期に身の潔白を証明したいという狙いがあるのでしょう。
SNS上では、この泥沼化する対立に対して不安と戸惑いの声が広がっています。「結局、一番損をするのは消費者ではないか」「米国の企業が1200社もダメージを受けるなら、トランプ大統領も考え直すべきでは」「ファーウェイ製品を使っているけれど、今後のサポートはどうなるの?」といった、経済的な混乱やユーザーとしての不利益を懸念するコメントが後を絶ちません。ハイテク戦争の余波は、確実に私たちの生活圏内にも押し寄せています。
「政治」が「市場」を歪める危険性
コラムニストとして私自身の考えを述べさせていただくならば、宋氏が指摘した「危険な前例」という言葉は非常に重い意味を持っています。安全保障上の懸念があるとはいえ、明確な証拠が開示されないまま、特定の民間企業を国家権力で市場から締め出す手法がまかり通れば、自由貿易の原則は崩壊します。今日はファーウェイですが、明日は別の国の、別の企業がターゲットになるかもしれません。政治的な思惑でビジネスのルールが恣意的に書き換えられることへの危機感を持つべきです。
ファーウェイ側は「以前から部品確保の準備をしており、大多数の製品は提供できる」と強気の姿勢を崩していませんが、事態は予断を許しません。略式判決に関する審理は2019年9月19日に予定されています。司法の場で「国防権限法の誤り」が正されるのか、それとも分断は決定的になるのか。この法廷闘争は、今後の世界経済のあり方を占う試金石となるでしょう。
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