【米国の監視リスト拡大】貿易摩擦の「漁夫の利」が一転!? シンガポール、マレーシア、ベトナムを襲う為替圧力の波紋

米中間の貿易摩擦が世界経済の地図を塗り替える中、その恩恵を受けると目されていた東南アジア諸国が、今度は米国の厳しい視線にさらされています。2019年5月28日に米財務省が発表した半期為替報告書において、シンガポール、マレーシア、ベトナムという東南アジアの主要3カ国が、新たに**「監視リスト」に指定されました。このリストは、為替操作を行っていないかを米国が監視するものであり、経済制裁を伴うものではありませんが、このタイミングでのリスト入りは、各国に強い警戒感をもたらしています。

この3カ国は、米中の貿易摩擦の激化によって、中国からの生産拠点移管や代替受注の増加といった「漁夫の利」(第三者の争いによって得られる利益)を得る可能性が高いと指摘されてきました。しかし、今回のリスト指定は、その恩恵と引き換えに、米国から輸入の拡大や自国通貨高の容認を求める圧力が強まることを意味しています。三菱UFJ銀行の井野鉄兵シニアアナリストは、「水面下で状況改善の圧力がかかり、米国から輸入拡大や自国通貨高の容認を迫られる可能性がある」と指摘しており、各国の政府や金融当局は、対応に追われることになるでしょう。

特に注目すべきは、シンガポールです。シンガポールは対米貿易では赤字国にもかかわらず、リスト入りとなりました。これは、同国の金融政策を担うシンガポール金融通貨庁(MAS)が、「頻繁に為替介入**(自国通貨の価値を意図的に調整するために市場で通貨の売買を行うこと)を実施している」点が問題視されたためでしょう。MASは監視リスト指定を受けて、翌日の2019年5月29日には早速反論文書を公表し、「輸出による利益や経常黒字を達成するために、為替相場を使うことはないし、使うこともできない」と強く主張しています。

一方で、ベトナムとマレーシアは、対米貿易黒字額で上位10カ国に入るほどの黒字国であり、監視リストの基準に抵触しやすい状況にありました。ベトナムなどは、貿易摩擦の長期化に伴い、中国からの工場移管や代替受注が進むことで、今後さらに輸出が増える効果が大きいと見込まれています。しかし、対米貿易黒字をさらに増やしてしまうと、それに見合う米国からの輸入を増やすよう、米国から「やり玉にあげられる懸念が高まる」わけです。SNSでは、「貿易の恩恵で喜んでいたら、米国に目をつけられた」「次の一手は関税か、輸入要求か」といった、各国の政府のジレンマに対する共感と懸念の声が見られました。

私見として、米国が為替監視リストの対象を東南アジアに広げたことは、米国の貿易赤字是正への執念と、為替問題の政治カード化が加速していることを示しています。これまで東南アジア各国は、貿易摩擦の「漁夫の利」を享受できると楽観視する傾向がありましたが、今回の措置によって、その利益を素直に喜べない状況に追い込まれたと言えるでしょう。ベトナムやマレーシアにとって、対米黒字が増加し続けることは、次の段階でタイのように将来的に監視リスト入りするリスクを高めることにもつながります。これらの国々が今後、米国の圧力と経済成長のバランスをどのようにとっていくのか、その戦略的な舵取りが極めて重要になるでしょう。

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