近年、社会人の学び直し、すなわち「リカレント教育」が大きな注目を集めています。これは、職業人として一度社会に出た後も、必要に応じて教育機関に戻って知識やスキルを習得し、再び仕事に就く、というサイクルを指す言葉です。私たちは年齢に関係なく、学びたいという強い意欲さえあれば、新しい世界への扉を開き、仕事の機会を格段に広げることができるでしょう。
著名なジャーナリストである私も、この学び続けることの重要性を自身の経験を通して強く感じています。2019年6月17日付けのこの連載では、私自身の体験などを踏まえ、生涯にわたる学習の価値について、その前編としてお話ししました。現在の私の活動を見ますと、ジャーナリストとしての仕事の傍ら、東京をはじめ、名古屋や長野の大学で教壇に立っています。大講義室を見渡しますと、若い学生たちに混じって、多くのシニア層の受講生が熱心に講義に耳を傾け、朝から積極的にメモを取る姿が日常の光景となっているのです。これは本当に素晴らしいことだと言えます。
若い方々にとって、学ぶということは、時に重荷に感じる経験かもしれません。また、社会人になってからも、業務に必要な資格試験や、例えばTOEICのような英語能力を測る試験への備えなど、学習は常に求められます。しかし、働き始めてからも特に大切にしていただきたい学びがあるのです。私自身の転機として、今から14年前の2005年、私は54歳で長年勤めたNHKを退職いたしました。これは、一人のジャーナリストとして自分の著書を書きたいという長年の夢を叶えるための決断でした。
NHK時代は主に社会部で事件や災害といった分野を取材してきましたが、組織を離れることを機に、これまでとは異なる視点を広げたいと考えました。そこで、自費で大学の社会人向け講座に通うことにしたのです。具体的には、外国為替の現場の実際や、表計算ソフトである「エクセル」を用いた金利計算、さらにはアジア各国の情勢など、多岐にわたる内容を学びました。私はもともと経済学部出身で、理論を中心に学んできたため、実際の経済活動に触れることは、非常に新鮮で刺激的な体験となりました。
さらに、視野を広げるため、海外へも自費で取材に赴きました。ちょうどイランの核開発疑惑が表面化していた時期で、専門家の意見を聞き、現地で取材活動を行ったことが、中東の歴史や民族に対する理解を深める大きなきっかけとなったのです。この他にも、イスラエルや旧ユーゴスラビアといった地域を取材で訪問しました。こうした活動は、NHKという大きな組織に所属していた頃には、なかなか実現できなかったことでしょう。生活のことを考えれば、大きな組織を離れるという選択は確かに勇気がいるものでしたが、この新たな挑戦への一歩が、その後の私の人生の可能性を大きく広げてくれたことは間違いありません。
💡スキマ時間の活用法:読書と英語学習が人生を豊かにする
今振り返ってみますと、NHKの記者時代にも、後々の活動に役立つ学びの経験が豊富にありました。それは、日々の取材活動で生じる、記者会見が始まるまでの待ち時間や、重要人物が帰宅するまでの「すき間」の時間を、効果的に読書や英語学習に充ててきたことです。読書を継続することで、自分の知らない未知の世界を広げることができますし、教養豊かな人々の考え方を学ぶこともできるでしょう。
英語学習については、ページ数が比較的少ないラジオ講座のテキストのような教材を選びました。1日10分、あるいは15分といった短い時間かもしれませんが、これを何日も、何年にもわたって積み重ねることにより、結果的に非常に長い学習時間となるのです。この地道な努力のおかげで、海外取材で必要となる基礎的な英会話力を養うことができました。SNSでも、こうした「すきま時間学習」について、「移動中にオーディオブックを聞いている」「朝の支度中にラジオ英会話を流している」など、学びを諦めない工夫をしている方の声が多く見られます。
人生の先輩として、私自身の体験から自信を持って言えることは、学ぶということは、自分の知らない世界を知ることに繋がり、それが自らの人生の可能性を大きく広げてくれるきっかけになるということです。年齢を重ねても、知的好奇心を持ち続けることができれば、必ずや心の若さをもたらしてくれるでしょう。これこそが、学びの醍醐味だと私は考えています。
最後に、いつまでも若々しくありたいと願う多くの人々に愛されてきた、有名な詩の一部をご紹介します。詩人サミュエル・ウルマンの『青春』の一節です。岡田義夫氏による訳では、「青春とは人生のある時期を言うのではなく心の様相を言うのだ。(中略)年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる」と述べられています。まさにこの言葉の通り、私たちは理想と好奇心を失わなければ、いくつになっても「青春」の中にいられるのではないでしょうか。
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