私たちの生活に欠かせないレジ袋や食品パッケージの原料である「ポリエチレン」の世界に、今、大きな地殻変動が起きています。2019年12月05日現在の状況を見ると、米国からの輸出が驚異的な勢いで増加しており、市場の勢力図を塗り替えようとしているのです。
SNS上では「プラスチック製品の価格が下がるのか?」といった期待の声がある一方で、石油化学業界の関係者からは「供給過剰による市場の冷え込み」を懸念するシビアな意見が目立ちます。米国では安価なエネルギー源であるシェールガスの活用が本格化しており、生産体制が劇的に強化されました。
この「シェールガス」とは、地下深くの岩石の層から採取される天然ガスのことで、従来の石油由来の原料に比べてコストを圧倒的に抑えられるのが特徴です。米国では、このガスを原料としたプラントが次々と稼働し、ポリエチレンの生産能力は2020年には2017年比で3割以上も拡大する見通しです。
アジア市場へ押し寄せる米国産の波
米国の凄まじい増産分は、自国の需要を遥かに超えて世界中へ溢れ出しています。2019年7月から9月にかけての月間輸出量は平均81万トンを超え、わずか2年前と比較して2倍以上の規模に膨れ上がりました。驚くべきことに、その輸出先の約3割がアジア市場に向けられているのです。
かつてアジア市場における米国産のシェアは2割に満たないものでしたが、今やその存在感は無視できないレベルに達しています。背景には、原油から作られる「ナフサ(粗製ガソリン)」を主原料とする他国に対し、安価な「エタン」を利用できる米国産の圧倒的な価格競争力があると言えるでしょう。
しかし、この供給ラッシュは諸刃の剣でもあります。世界的な景気減速の影響も相まって、アジアでの取引価格には強い下押し圧力がかかり始めました。2019年12月現在、ポリ袋などに使われる低密度ポリエチレンの価格は1トンあたり860ドル前後まで下落し、直近のピーク時から7%も値を下げています。
日本のメーカーは国内供給が中心のため、直ちに致命的な影響を受けるわけではありませんが、楽観視はできません。米国の輸出量は日本の年間生産量を上回る規模に達しており、アジア全体の需給バランスを左右する巨大な要因となっているからです。市場の動向には、今後も一層の注視が必要ですね。
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