私たちの生活に欠かせない物流の主役、段ボール業界が大きな転換期を迎えています。全国段ボール工業組合連合会が2019年12月13日に発表した2020年の需要予測によると、全体の需要は145億平方メートルに達する見込みです。これは2019年比で0.7%という微増にとどまっており、これまでのような右肩上がりの急成長にはブレーキがかかった格好といえるでしょう。
2019年を振り返ると、台風をはじめとする自然災害の影響が大きく、需要は前年並みに落ち着く結果となりました。しかし、業界にとってより衝撃的なのは、これまで年率5%以上の猛烈な勢いで成長を続けてきた「通販・宅配・引っ越し用」の減速ではないでしょうか。2020年におけるこの分野の伸び率は2%強に留まると予測されており、ネットショッピングの爆発的な普及による「段ボールバブル」がひと段落したことを示唆しています。
この背景には、環境意識の高まりを受けた「省資源化」という大きなトレンドが存在します。最近では、商品のサイズに極限まで合わせた梱包材を使用する技術が進化しました。無駄な余白を削ぎ落とすことで、結果として消費される段ボールの面積(平方メートル)が減少しているのです。これは企業にとって輸送効率を高める賢い戦略ですが、素材の出荷面積を指標とする統計には大きな変化として表れています。
インバウンドと個食化が支える「食」の底堅い需要
一方で、全用途の約4割という最大のシェアを誇る「加工食品用」は、2020年も堅調な推移を見せています。現代社会のライフスタイルである「個食化(家族が別々に食事を摂ること)」や調理の手間を省く時短ニーズが、冷凍食品やレトルト食品の需要を強力に後押ししているからです。SNSでも「宅配の箱は減らしたいけれど、便利な冷凍食品の備蓄は欠かせない」といった声が多く見られ、生活に密着した需要の強さが伺えます。
さらに、2020年に開催される東京オリンピックに伴うインバウンド(訪日外国人客)需要も、食品業界にとっては追い風となるはずです。観光客によるお土産需要や飲食消費の拡大は、間接的に段ボールの消費を1%程度押し上げると期待されています。こうした明るい兆しがある一方で、「電気器具・機械器具用」については、五輪によるテレビの買い替え特需が限定的であると分析されており、前年並みの横ばい予想となっています。
個人的な見解を述べさせていただくと、面積ベースの伸び悩みは、決して業界の衰退を意味するものではないと考えます。むしろ、過剰梱包を避ける「脱段ボール」や最適化は、SDGs(持続可能な開発目標)が重視される現代において避けては通れない進化です。同連合会の大坪清理事長が語るように、箱数ベースで堅調であれば、それは物流がより効率的でスマートな形へと洗練されている証拠と言えるでしょう。
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