精密機器大手のHOYAが、東芝のグループ会社であるニューフレアテクノロジーに対して、異例とも言える敵対的なTOB(株式公開買い付け)を行うと表明しました。今回の買収劇には最大で1477億円という巨額の資金が投じられる見込みであり、全株式の取得を目指すという強気な姿勢が注目を集めています。同社を巡っては、親会社である東芝も完全子会社化に向けた手続きを現在進行形で進めており、日本のビジネス界では珍しい三つ巴の争奪戦へと発展する兆しを見せているのです。
今回の騒動の中心にある「TOB」とは、あらかじめ買い付け価格や期間を公表し、不特定多数の株主から市場を通さずに株式を買い集める手法を指します。東芝は2019年12月25日を期限として買い付けを行っていますが、HOYAはこれに対抗し、東芝の提示額を1000円も上回る1株あたり1万2900円という高値を提示しました。SNS上では「資本主義のドライな戦いが始まった」「株主にとっては夢のような展開」と、その攻勢に驚きの声が上がっています。
半導体製造の鍵を握る「マスク描画装置」の重要性
なぜHOYAは、これほどまでに強硬な手段を選んだのでしょうか。その理由は、ニューフレアテクノロジーが持つ「マスク描画装置」という特殊な技術にあります。半導体を作る際には、まずガラス基板に回路を描いた原版である「フォトマスク」を作らねばなりません。HOYAはその原板の材料となる「ブランクス」で世界シェアの7割を握るトップ企業ですが、装置そのものを作る技術を取り込むことで、半導体事業の垂直統合を成し遂げ、競争力を圧倒的なものにしたいという悲願があるようです。
HOYA側は2017年以降、幾度となく提携の打診を重ねてきたものの、進展が見られなかったことから今回の強行策に打って出ました。一方の東芝は2019年12月13日の声明で「自社による完全子会社化こそが企業価値を最大化する道である」と反論し、一歩も引かない構えです。東芝にとっても、次世代の製造装置開発においてニューフレアの技術は不可欠であり、グループの機動力向上を理由に、この重要な拠点を守り抜く決意を固めていることが伺えます。
このニュースを受けて、株式市場は敏感に反応しました。発表があった2019年12月13日の終値では、HOYAの株価が2%以上の伸びを見せた一方、ターゲットとなったニューフレアの株価は11%を超える急騰を記録しています。投資家の間では、今後の買い付け価格の引き上げ競争への期待感が膨らんでいるようです。個人的な見解としては、日本企業同士の健全な競争は技術革新を促す側面もありますが、泥沼化して開発現場に混乱が生じないことを切に願うばかりです。
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