日本郵政グループが揺れています。かんぽ生命保険による不適切な販売問題が世間を騒がせる中、事態の打開に向けて就任した日本郵政の増田寛也社長らが2020年01月09日、初めての記者会見に臨みました。増田社長は、今回の件を「グループ創立以来の最大の危機」と表現し、深刻な表情で全容解明を急ぐ方針をアピールしています。SNS上でも「信頼していただけにショックが大きい」「早く全貌を明らかにしてほしい」といった、顧客からの厳しい声や不安が次々と投稿され、注目度の高さがうかがえました。
これまでの調査では、保険料の二重徴収や顧客に不利益を与える契約の乗り換えなど、約18万3000件の疑わしい事案が重点的に調べられてきました。しかし、事態はそれだけに留まりません。金融庁の立ち入り検査により、顧客の意向を無視して契約の解消と締結を何度も繰り返す「多数契約」といった、さらなる不正の影が浮き彫りになっています。増田社長は、これらについても「別途調査したい」と踏み込み、外部の力も借りながら調査をスピードアップさせる考えを明らかにしました。
特に現場の販売員の間で知られていたのが、「ヒホガエ」と呼ばれる極めて悪質な手法です。これは、保険の対象者となる「被保険者」を何度も変更することで、見かけ上の契約数を稼ぐ行為を指します。このような専門的な隠語が横行していた事実に対し、ネット上では「顧客を置き去りにした数字至上主義だ」という怒りの声が噴出しました。今後はこうした案件も調査のメスが入るため、被害を受けた可能性がある顧客の数はさらに膨らみそうな気配を見せています。
私は、今回の問題の根底には、成果のみを追い求める歪んだ組織風土があったと感じてやみません。企業が利益を追求するのは当然ですが、それは顧客の信頼という土台があってこそ成り立ちます。今回のように、契約者を欺くような手法が蔓延していたことは言語道断であり、まずは徹底的な膿の出し切りが必要です。増田社長が語るように、全社員がこの危機意識を自分事として共有し、文字通りゼロから信頼を築き直す覚悟が求められているのではないでしょうか。
問われるコンプライアンスと今後の成長戦略
信頼を失った組織を立て直すため、新経営陣は「コンプライアンス(法令順守)」と「ガバナンス(企業統治)」の抜本的な見直しを宣言しました。これらは、企業が法律を守り、不正を行わないように自らを厳しく管理する仕組みのことです。増田社長は、外部の専門家を交えた新しい組織を立ち上げ、客観的な視点から体制を再構築する意向を示しています。日本郵便の衣川和秀社長も風通しの良い会社作りを約束し、かんぽ生命の千田哲也社長も社内の情報共有を徹底すると誓いました。
一方で、会見では今後の成長戦略についての具体的なビジョンは語られませんでした。記者からの質問に対し、増田社長は「いま夢を語ると余計に信頼を失う」と言葉を濁し、足元を固めることに専念する姿勢を繰り返しています。金融庁などから2020年03月末までの営業停止処分を受けている現状では、販売再開の見通しすら立っていません。民営化の推進は掲げつつも、まずは組織としての形を整えることが先決であるという、極めて慎重な舵取りが続いています。
さらに会見では、前総務次官から情報が漏洩したとされる、官民の癒着問題についても事実関係を調べる方針が明かされました。新経営陣にとって、2020年01月末に政府へ提出する業務改善計画の策定や、不利益の解消を求める4万5000人以上の顧客への対応は、一刻の猶予も許されない最優先課題です。この巨大な組織が真に生まれ変われるのか、新社長らの手腕に大きな期待と厳しい視線が注がれています。
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