今、地球の反対側にある中南米で、スマートフォンを使ったフードデリバリーサービスが驚異的なスピードで拡大しています。ブラジルをはじめとする現地事情に精通した「ブラジル・ベンチャー・キャピタル」の中山充最高経営責任者(CEO)によると、この数年間での普及ぶりには目を見張るものがあるそうです。SNS上でも「中南米の配送アプリの進化が凄まじい」「街中で配達員を見かけない日はない」といった現地からの驚きの声が多数投稿されており、エリア全体で大きな地殻変動が起きていることが窺えます。
この急成長の背景には、現地特有のビジネス環境が深く関係しているようです。もともとブラジルの飲食店などには出前を行う文化が根付いていましたが、複雑な労務問題や重い社会保障費の負担がネックとなり、自前で配送網を持てる店舗は一握りに限られていました。しかし、スマホ宅配事業者が登場したことで状況は一変します。店舗側は売上高の2割から3割を手数料として支払うだけでよく、初期投資や固定の維持費を一切かけることなくデリバリーを開始できるようになりました。
リスクなしで新しい販路を開拓できる仕組みは、現地の飲食店にとってまさに救世主と言えるでしょう。このように利便性とコストパフォーマンスの高さが合致した結果、爆発的な普及に繋がったと考えられます。私は、このシステムが現地の雇用形態や中小企業の生存戦略を根本から変えたのだと確信しています。参入障壁を徹底的に下げたプラットフォームの勝利であり、これまでの古いビジネス慣行をテクノロジーが鮮やかに打破した、非常に見事なイノベーションの事例です。
現在のデリバリー市場はまさに戦国時代の様相を呈しており、M&A(企業の合併・買収)や投資活動が世界中から活発に行われています。市場自体が立ち上がってまだ間もないため、地域ごとにシェアのばらつきが大きく、圧倒的な勝者は存在していません。そのため、少しでも早く市場を支配しようと、特定の地方や国で強みを持つ事業者が買収の標的になる事例が増加しています。時間をゴールドで買うような、激しいスピード競争が現地ではリアルタイムで繰り広げられているのです。
日本を凌駕する!ベンチャー投資の巨大マネーとユニコーン企業の台頭
中南米のベンチャー市場そのものに目を向けると、世界中の投資家から熱い視線が注がれていることが分かります。アメリカや中国のIT巨頭だけでなく、日本のソフトバンクグループも多額の資金を投入している状況です。さらに直近では、伝統的な銀行や投資信託、そして年金ファンドまでもがベンチャーキャピタル(VC)へ出資を始めており、流れ込むマネーの総量は膨れ上がっています。VCとは、高い成長が見込める未上場企業に投資を行う組織のことで、その資金が市場をさらに加速させています。
こうした巨額マネーの流入によって、企業価値が10億ドル(約1100億円)を超える未上場のスタートアップである「ユニコーン企業」が次々と誕生しています。その数はすでに日本を追い抜いており、世界的に見ても絶対に無視できない巨大な一大マーケットへと変貌を遂げました。この急激な地殻変動は、日本国内に留まっていては気づきにくい世界のリアルな競争の縮図です。中南米のダイナミズムから、私たち日本のビジネス界も学ぶべき点が非常に多いのではないでしょうか。
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